櫻イミト

少年探偵団 妖怪博士の櫻イミトのレビュー・感想・評価

少年探偵団 妖怪博士(1956年製作の映画)
3.5
前年まで松竹が展開していた江戸川乱歩「少年探偵団」シリーズの続きを東映が制作した全九本の第一作目。脚本は松竹の「怪人二十面相」(1954)「青銅の魔人」(1955)を手掛けて来た小川正。監督は「月光仮面」(1958)「点と線」(1958)の小林恒夫。

原子炉の設計図を狙う怪人二十面相(南原宏治)のたくらみに名探偵・明智小五郎(岡田英二)と少年探偵団が立ち向かう。最後は完璧なクリフハンガーで後編「二十面相の悪魔」に続く。。。

“少年探偵団”映画の決定版と言って良い。松竹時代と同じ脚本家のシナリオなのに、スタッフ・キャストの力でこれほど完成度が上がるのかと驚く。

後に名悪役として活躍する南原宏治の二十面相は知的さも感じさせ悪の貫禄充分。変装が上手く仕上がり過ぎで本人だとわかりにくいのが気の毒なほど。そして “和製ジャン・マレー”こと岡田英次の明智も、端正で子供たちへの包容力も感じられとても格好良かった。少年探偵団の演出演技もスムーズで前作までのような不自然さを感じることはなかった。

演出・撮影も一流を感じさせ、ハリウッド的なダイナミックさもあった。同年代の日本の大衆娯楽映画をあまり観ていないので断言できないが、かなりレベルの高い出来映えに感じた(松竹版がお粗末すぎたので尚更良く見えるのかもしれない)。クリフハンガーとなる派手な屋敷爆破シーンにも制作陣の本気を感じた。
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