KaraP

映画に愛をこめて アメリカの夜のKaraPのレビュー・感想・評価

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全く内容を覚えてなく、20年ぶりくらいに観たんですけど、まだ顔も映らない、階段を上がって道に出てきた瞬間に「あ!ジャン・ピエール・レオだ!」ってわかるから、彼はスゴイと思った笑。

ところでいきなりですが私。トリュフォー苦手なんですよね。

おもしろいとは思うんですけど、それ以上でもそれ以下でもなくて、だったらトリュフォー観る時間を他の映画を観るために使っても別にいいような気がしてしまう。

私にとって彼はそんな監督です(1作だけ好きな映画がある)。


というわけで「アメリカの夜」。

これは有名な「映画製作をネタにした映画」ですね。

73年当時は、このような舞台裏を描く映画も珍しかったでしょうから、評判を呼んだのはわかります。お楽しみや伏線が多種多様に含まれててエンタテインメントとして十分に素晴らしいです。理解が難しいということもないし、各所にウンチクや名セリフ、監督本人の考えなどが提示されてて「なるほどなるほど」と思いつつ観るのですけど、「ドキュメンタリー風」という点については、果たしてこれが事実なのか誇張なのか、判断が難しいところだなと思った。それは今の私が「1973年」という気持ちになって観られないからです。既にたくさんの業界ネタや事実を知ってしまっており「そうそう!」と思ったり「いくらなんでもコレはない気がする」などと共感しようにも、素直にそう浸れないからなんですね。


そういう意味では、無駄に知識や経験があると素直に見られない映画、という事も言えると思います。ネットのレビューなどを読むと、何人もの自称「経験者」という人が居て「あるあるだと思った」とか「懐かしいと思った」と述べてるんだけど、個人的にはそういう感想ですら「本当かなあ…」「いやー個人的にはそんな経験はないなあ」と思ってしまいました。特に今は2021年ですからね。ずいぶん業界も「整理」されてしまって居る気がします。そういう「行儀のよい」業界が当たり前の現在では、この映画内のすべてが「誇張」「盛りすぎ」に見えてしまうという不幸があります。難しいものです。

映画製作をよく「文化祭」に例えてる人が居ますが、個人的には「そのとおり」だと思います。この映画もそうですし、実際にもそれに近いでしょうね。

ただむしろ今の日本では、それを極めた世界は「土木建築業界」に多いのではないかと感じました。携わった人々が一致団結して一つのものを完成させる。橋とかトンネル、ダムなどがそうです。日本ではそういうプロの世界は土木建築の世界にしかないのだなあ…。そんなことを思いました。

自分はトリュフォーが苦手だと言いましたが、この映画に限らず、どのトリュフォーについても「トリュフォーの映画だ」という前提があって観るのと、まったくそれがないまま素の状態で観るのでは感想が違う気がするんですよね。やっぱりどうしても「トリュフォーだから」というのがあって、それを前提に観ることになる。そういう目で観るから楽しめるものなのだろうと個人的に思います。


この映画のメッセージって「大変な世界でしょ?でもこんな世界だけど自分は楽しいし、ココじゃないと生きていけないから」じゃないかなと思うのですよね。いわゆる社会不適合でこの世界じゃないと生きていけないタイプの人がいる。トリュフォーもそうなんだろうし、主演のジャン・ピエール・レオにそれを代弁させています。そういうことなんだろうね。

俳優さんですが、ジャクリーン・ビセットの透明さはまあ当然として、個人的にはメイクさん(Nike Arrighi)について「めんどくさそうな人だけど現場には重要なんだよなあ…」って思って、ココに一番リアリティを感じました。ああいう人が現場にいることでかなり救われているところはあると思います。これは私自身の経験による意見です。


まあそんな感じで褒めてるのか貶してるのかよくわからない感想でしたが以上となります笑。
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