青山真司と井上紀州両監督が1992年に46歳で亡くなった小説家・中上健次を追悼したロードムービー。撮影・田村正毅。音楽・坂本龍一、大友良英。
紀州生まれの井上紀州が同郷の作家・中上健次の綴った”路地”を求めて車で旅をする。かつて”路地”があった風景に、中上の撮影した8ミリフィルムが重ねられていく。。。
中上健次の著作は数冊しか読んでいないが楽しめた。行く先々で井上紀州が中上の著作を朗読する。他に説明の類は日付と地名だけなので、中上を知る者に向けたハイコンテクストな一本とは思う。それでも、本作の中に文豪の内なる故郷(=被差別部落)の姿が立ち上っているように感じられ思いを馳せた。和歌山県は高野山しか行ったことないので紀州や熊野も訪ねてみたくなった。
リアルなファウンド・フッテージものとも言える。監督、撮影、音楽の一流の実力が本作に普遍性をもたらしている。