MrFahrenheit

フェリーニのローマのMrFahrenheitのレビュー・感想・評価

フェリーニのローマ(1972年製作の映画)
4.8
「フェリーニのローマ」監督名を冠したタイトルが作品をこれ以上なく表している。

監督の幼少期から戦時中、戦後のローマが場面ごとに時間を超えて映し出される。特定の主人公を持たず、特定の物語を追わず、散文詩を映像化したような作りはアマルコルドに近い。

監督の都市に対するノスタルジーは伝わってくるが、一方的に見せつけられた気はしない。抽象的な構成だが、難解さを感じさせない。芸術寄りの映画は鑑賞中に意図を考えるのに疲れたり、見終わった後に果たして私が面白い/面白くないなどと感想を述べてよいのか躊躇させられることもあるが、この映画は問答無用に面白い。

考える前にそう感じたのは私の好みと言えばそれまでだが、現実とファンタジーの境界を曖昧にする魔法のように美しい映像だけでなく、市井の喧騒とそこで生きる人に向けられた視点、娼館と教会を地続きに映す公平さ、フェリーニ流のヒューマニズム、生きることに対する拘りと愛情に貫かれているからだと思う。そしてユーモア。ユーモアは人生に彩りを与えてくれる。

久しぶりにレンタルして週末に鑑賞し、来週も生きようと思った。死ぬ気はないですが。BD出てたので買います。