こたつむり

独立愚連隊西へのこたつむりのレビュー・感想・評価

独立愚連隊西へ(1960年製作の映画)
3.0
♪ ただじゃ転びやしませんぜって
  非常事態ってやつも歓迎です 
  ニシエヒガシエ

戦争は災厄であり悲劇である。
うん。確かにそう思います。人命が失われる状況で白い歯を見せる…そんな所業は頭がイカレた僕でも躊躇します。たぶん。

しかし、それだけが戦争の側面でしょうか。
ほんの少しでも“面白い”こともあるんじゃないでしょうか。「不謹慎」かもしれませんが、人命がチリ紙のように消費されるからこそ、笑ってしまう部分もあるんじゃないでしょうか。本作はそんな物語だと思います。

間違って戦死扱いされた独立愚連隊。
彼らに命じられたのは“軍旗”の捜索でした。
何しろ、穴だらけでボロボロの旗よりも人命の方が軽いんです。その時点で“何かがおかしい”わけですが、誰もが疑わずに命を懸けます。

とても複雑な気分になりますよね。
観ている側は胸が痛くりますが彼らは飄々としています。戦場で歌も歌います。それに若かりし頃の加山雄三さんが良いんですね。理想的な小隊長って感じ。若大将と呼ばれたのも納得です。

ただ、正直なところ。
物語の展開は微妙な感じ。昭和ど真ん中のノリが痛々しいです。好みもあるとは思いますが、大仰なセリフ回しも含めて“時代”を感じるのは仕方がないのでしょう。歴史を学ぶ姿勢が大切ですね。

また、音割れする音声も微妙でした。
この辺りは録音技術やフィルムの保存状態とかあると思いますが…。現代の技術ならクリアにマスタリングできそうですけどね。それだと“味”がなくなっちゃうんですかね。

まあ、そんなわけで。
戦争を知らない世代には作れない戦争コメディ。硬直化した軍隊を“ふんわりと”描いて戦争批判した作品なので、何気に令和の世では難易度が高いかも。

何しろ、現代は「多様性」と言いながら、価値観を統一させる方向に進んでいますからね。本作を受け入れる度量が真の「多様性」であり「自由」に繋がると思うんですが。
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