こたつむり

ある閉ざされた雪の山荘でのこたつむりのレビュー・感想・評価

ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)
3.1
♪ 我が祈り 我が恋 我が明日 我が命
  全てを手に入れるのがルールさ
  いくつもある勝利への道筋なら
  魂の中 本当の自分を見つけろ

原作を読んだのはン十年前。
なので、内容をまったく覚えておらず、冒頭からして「あれ?舞台は雪山じゃないんだ。原作をアレンジした映画なのかな?」と勘違いする始末。

でも、実は原作に忠実だったんです。
“閉ざされた山荘”はミステリの定番。それを逆手に取った設定が本作(原作)の目玉だったんです。だから掴みは上々。これから何が起きるのか…。オラ、ワクワクしてきたぞ。

また、宿泊者の位置関係を把握させる演出もツボ。いいよ、いいよ。このギミックいいよ。ぶっちゃけた話、推理に必要ない情報なんですが、それでも「手の内は明かしていますよ」的なフェアプレイ精神が良いんです。

これってミステリでは大切な話。
読者は予想外からの一撃を期待していますが、それでも“予想できる範囲”からじゃないとダメなんです。完全に異次元からの一撃はアンフェアでNGなんです。

ゆえに、本作は良作の部類。
どのように物語を転ばせるのか…起伏が緩やかなのも伏線に違いない…なんて考えながら中盤を乗り越えようとしたんですが…。

はい。途中で醒めました。
ネタバレに繋がるんで詳細は避けますが、主人公の“ある発案”に意味を感じられず、それが事件の骨格を揺るがしてしまったところに、雑さを感じちゃったんです。

うーん。原作ではどうだったんだろう。
原作をトレスしたんだとしたら…本作は90年代初頭だからこそ成立したミステリだったのかも(要は現代の小説でルルーの『黄色い部屋』は成立しない…ということです)。

まあ、そんなわけで。
前半だけならば諸手を挙げてオススメできる作品。次第に肩が下がっていく…特に終盤のまとめ方は、邦画の悪いところが凝縮された感じなので、途中リタイヤが一番楽しめるかもしれません。
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