りょう

殺人の追憶のりょうのレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
4.2
 当時は劇場で観て、「こんなエンディングでいいのか?」と思わずにいられませんでした。究極のバッドエンドではありませんが、悲惨な結末を直接的に描くよりも後味が悪くて、とても印象深い作品になりました。物語の16年後となる2003年のエピローグがとても効果的です。
 1980年代の韓国の田舎はこんな雰囲気だったのでしょうか。殺人事件の被害者の周囲を地域の住民が走りまわったり、素人でも警察の初動捜査のマズさがわかるし、このタイミングでテレビカメラが遺体を撮影しているって…ちょっと想像できない光景でした。
 警察は違法捜査のオンパレードで、証拠の捏造、拷問、自白の誘導、令状なしの家宅侵入…ほとんどコメディかパロディのような展開です。それを大マジメな作風で表現しているので、そのアンマッチ感が心地悪いです。
 ただ、後半で有力な容疑者が判明するあたりから、地元のパク刑事の表情が一転し、とたんにシリアスな雰囲気になります。ここから怒涛の展開ですが、前半でわちゃわちゃしていた登場人物たちのやりとりが伏線だったことに気付きます。実際の殺人事件をベースにしつつも、かなり緻密な脚色が素晴らしいです。
 映像は、フィルム全体を脱色したようなカーキ色のイメージで、カラフルな色彩は被害者の赤い服くらいしか記憶にありません。ポン・ジュノ監督は、キャリアの初期にもかかわらず、これほどまでの演出で強烈な印象でした。ほぼ同時期にデビューしたパク・チャヌク監督とともに、次回作を期待してしまうクリエイターです。
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