キモサベ

女の座のキモサベのレビュー・感想・評価

女の座(1962年製作の映画)
3.5
※注意:ご覧になる前にキャスト(配役)を調べて、ご自分で『家系図』を作ってから鑑賞することをおすすめします・・・大きなお世話です

冒頭から脱線してすみません

石川家、“大家族”の人間ドラマ・・・そこからは色々なものが見れ隠れしてきます
・東京オリンピック開催(1964年)前の物語である
・長男(既に他界)の嫁(高峰秀子)が、家と稼業(雑貨屋)を切り盛りしてる 高校受験の息子がいるが、あまり出来は良くない
・母親(杉村春子)は後妻である 後に生き別れた息子(宝田明)と再会する
・次女(草笛光子)は前妻の子である 実家の離れに住む独身で、お茶とお花を教えている “おひとりさま”を宣言しているが・・・
・“美人”の五女(星由里子)は、映画館で切符切りのバイトをしている ボーイフレンド(夏木陽介)は気象庁に勤めているが、“給料”は安い・・とのことである
・長女(三益愛子)は下宿を経営してるが、亭主は目下、下宿人と駆け落ち中・・・が、前歴(3度目)があるのでそれほどあわてていない
・次男(小林桂樹)は、渋谷でラーメン屋をやっているが、結構繁盛してるらしい 出前の店員に出ていかれ困っている
・九州で暮らす三女(淡路恵子)が夫(三橋達也)を連れて帰ってくるが、これを機に居座っている(わけあり)
・四女(司葉子)の務める会社は倒産してしまい、母親に言われ渋々次男のラーメン屋を手伝うこととなる・・・が、美人のため、それ目当ての客で店はさらに繁盛する
・そのラーメン屋の客で出ているのは、「ウルトラQ」(テレビドラマ1966年~)で戸川一平役の西條康彦である・・・って、これは全然関係ありませんから、わかんなくっていいです

・・・と、どです? やっぱり『家系図』必要だと思ったでしょ?

さてと本題です
これ、観ていて思ったんです 『これって、陰の主役は“お金”じゃね?』って
オリンピック開催を前に、舞台となる家族の土地が高速道路にかかる(らしい)・・・ということで、それぞれの人間の頭の中(もちろんセリフにも吐かれますが)は、そのお金がちらついているのが、ありあり
それとは別に、何かいい儲け話はないだろか?・・・です
みぃ~んな『捕らぬ狸の皮算用』

いやぁ~、こんだけの人物ですから、とにかく場面転換の忙しい映画でした・・・しかし、それは人物描写、すなわちキャラの描き分けにも通じていたのですね
成瀬巳喜男監督さんの見事な“手綱さばき”を実感しましたです
もちろん、日本映画の大監督さんです
声をかけられた俳優さんたちも、自身のキャリアの“勲章”に値する一作になったことでしょう

こんだけの新旧俳優さんを勢ぞろいさせる、ハリウッドならどんだけの“ギャラ”になるのかと? 大きなお世話です

それに他人同士のはずが、“偶然”の出会いや結びつき・・・まだまだ、東京がせまくって、人間関係も密だからこそ出来たのでしょうね

あと、場面場面で聞こえてくる何気ない“音”の使い方
石焼き芋の売り声、ラジオから流れる市況(株価)や気象の放送、消防車(?)のサイレン、雨、風、チンドン屋さん(死語です)もありました・・・そして、そして走る電車の音からの『意外なラスト』へ

劇中のセリフでも触れられていますが、登場人物の中でただ一人“他人”の芳子・・・ですが、本作ではまぎれもない主役です
タイトルにもある女の“座”・・・これは、芳子の“居場所”と言い換えることができるのかと
長男の嫁、しかも長男は亡くなってしまっている設定で、義理の父母・兄弟姉妹たちの振る舞いに翻弄されますが、ここは小津安二郎監督の「東京物語」(1953年)で、原節子が演じた紀子の姿とだぶって仕方ありませんでした ※そういえば、父親はどっちも笠智衆ですね

最後に、公開当時(1962年1月14日)での、女優さんたちの年齢を調べてみましたので、記しておきましょう
あき(金次郎の後妻):杉村春子 53歳
芳子(長男の嫁):高峰秀子 37歳
田村松代(長女):三益愛子 51歳
田村靖子(松代の娘):北あけみ 21歳
石川蘭子(次男、次郎の妻):丹阿弥谷津子 37歳
石川梅子(次女):草笛光子 28歳
橋本路子(三女):淡路恵子 28歳
石川夏子(四女):司葉子 27歳
石川雪子(五女):星由里子 18歳
金森静子(芳子の妹):団令子 26歳

・・・と言いますのは、“今”の女優さんでキャスティングできるかなぁって・・・誰にしよっかな?
キモサベ

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