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一刀斎は背番号6の一のレビュー・感想・評価

一刀斎は背番号6(1959年製作の映画)
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山に篭って武者修行中の剣の求道者がプロ野球入りして大活躍という度を越えて荒唐無稽な本筋はテキトーに投げっぱなしておいて、一刀斎が泊まる二流宿屋を舞台にした下町人情喜劇になると稲尾のスライダーのごときキレとカーブのごとき緩みを変幻自在に操る木村恵吾、只者ではない。やたらと詰め込んだ細かいエピソードを適当に捌いていく力の抜けたフィールディングのセンスも光る。叶順子、浦辺粂子、菅井一郎、清川玉枝あたりの会話は丁々発止で心地よく。潮万太郎の無駄に長い一人喋りや、弾き語りで謙次に迫る春川ますみにジリジリさせられ。2階から直立のまま落ちてくる謙次とそれを巡る順子vsますみの唐突なキャットファイトもすごいが、最終的に何やら意味ありげに2階の部屋へ目配せをして去っていくますみの後ろ姿のえも言われぬ哀切は何。謙次への恋心を飲み込んで婚約者との結婚を承諾する順子と察し&物分かりのいい母・粂子のしんみりするやりとりも急に何。2ストライクから何の理屈説明もなしに目隠ししだして、ヤンキースのピッチャーからばっこんホームラン打って試合も映画そのものも終わらせるラストは豪快すぎて呆然。プロ野球選手が何人もゲスト出演しているが、それよりも十朱久雄のユニフォーム姿のほうが嬉しいね。
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