タキ

007/ムーンレイカーのタキのレビュー・感想・評価

007/ムーンレイカー(1979年製作の映画)
2.0
【あらすじ】アメリカからイギリスへ空輸中のスペース・シャトル“ムーンレイカー”が何者かによって奪われる。指令を受けたボンドはムーンレイカーを製造した大富豪のドラックスのもとへ向かう。そこでNASAの女性科学者グッドヘッド博士と出会うが実は彼女はCIAスパイ。2人は手を組みベネチアやリオデジャネイロへ飛びながら事件を追う。ドラックスは選ばれた人間だけをノアの箱舟のように宇宙へ連れて行き新世界を作ることを目論んでおり、人間だけに効果のある神経ガスを撒いて地球を滅亡させるつもりであった。こうして猛毒の神経ガスを積んだシャトルが次々と離陸しボンドとグッドヘッド博士もそのうちのひとつの機体を奪って追いかけるのだった。

見所はズバリオープニングでしょう。空中でパラシュートを奪い合うスカイダイビングなんだけど特撮なしで何十テイクも重ねて撮影したそうで、よくこんなことできるな!と驚くしもうアナログの限界の向こう側まで行っちゃってた感があった。ホバークラフトに変形して地上を走るゴンドラやシャトルの打ち上げや宇宙ステーションなど制作費を湯水のように使ったと思われるシーンを見るとスタッフが当時の最大限の精力を注ぎ込んだ気合いを感じる。ホンモノによせようよせようとする美術スタッフと徹頭徹尾コメディでいこうとするディレクション。これが007の007たる所以なのだと妙に納得する。ストーリーのトンチキぶりと明るく軽薄なロジャームーアボンドの親和性がかなり高いため面白さの判断も自然甘くなるのかもしれない(1979年の映画の世界興行成績がスターウォーズを抜いて第1位だった)
一段とアクションが緩く段取りで精一杯だがラブシーンになると途端にイキイキするボンド氏と今回のミッションの相棒にしてボンドガールとなる美しきCIAの女スパイ、ホリー・グッドヘッド嬢(ロイス・チャイルズ)の影が薄くなるほど目立ってたのが前回に引き続き登場した不死身のジョーズ(リチャード・キール)だが、前回よりお茶目で3枚目になっておりなんと作中にロマンスまで用意されていた。お相手が襲ったボンドに逃げられたあと乗っていたロープウェイが激突し瓦礫に埋まっていたジョーズを助けてくれた女性なのだが、金髪三つ編みのメガネっこながら巨乳(半乳のセクシー衣装だった)という2次元キャラの実写版みたいな女性でいったい何者だったのか最後まで明かされなかった。そういえばセリフもなかったかもしれない。それなのにものすごいインパクトでこっちの脳内を侵食してくる。ドリーという名前だったらしいがジョーズガール恐るべし。ロイス・チャイルズが気の毒すぎる。こんなに影が薄くなってしまったボンドガールがかつていただろうか。
いや彼女だけではない、今回の悪役ドラックス(マイケル・ロンズデール)もその存在をうっかり忘れてしまいそうになるほど影が薄い。ボンドにQの秘密兵器ブレスレット型のダーツで胸をさされ宇宙空間に放り出されるというたいそう地味であっさりした最期であった。ジョーズは最終的に執拗に追いかけたボンドの味方となり死よりもドリーと2人でいる世界に幸せそうであったが宇宙から生還するという不死身ぶりは最後まで健在であった。
ドラッグスの部下でチャンという名の東洋系の風貌をしたナゾの剣道の使い手がいたが剣道の防具をつけて竹刀をブン回していてほほえましい感じに仕上がっていた。あれで人は殺せない。しっかりしろ。
スペースシャトルを手動で操作するという離れ業を繰り出しながら毒ガス玉をもすべて撃ち落とし地球を救ったボンドとホリーはお約束のシーンでラストをむかえる。「米英初のジョイント飛行なので…」とM達が話してると任務完了したボンドとホリーの「無重力セックス」映像が大写しになり「何をしとる?」の問いにQが「再突入でしょう」と答えるのだった。
おバカ!バカバカバカ!!!
期待以上のバカでいっそ清々しい。
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