Shoya

青空どろぼうのShoyaのレビュー・感想・評価

青空どろぼう(2010年製作の映画)
3.5
四日市ぜんそくの実態を公害記録人という立場で追いかけ続ける澤井余志郎さんを映したドキュメンタリー。

四日市の街と住民を汚したコンビナートの煙は、今では殆どが水蒸気に代わり、有害物質の排出量も比べものにならないくらい下がっているのだという。有害物質は出なくなった。健康被害もほぼ無い。しかし、果たしてそれがこの公害問題のゴールなのだろうか。

あの場所に今もなお工場を構える企業の社員は、カメラの前で公然と「私たちは(四日市ぜんそくのことを)知らない。」と言い切る。さらには四日市市長も患者の実態調査を「市長になってまだ2年だからやっていない」と言い切る。
この姿勢はとても恐ろしいと思った。今その街に生かされているのなら、そこで起きた大事件のことをもっと知るべきではないのか。よく恥ずかしげもなくこんなことが言えるものだ。

50年前に病室で苦しんでいた老人と、いま観光ボートに乗ってはしゃぎながらカメラを構える若者の指さす先には同じコンビナートが広がっている。
たしかに四日市ぜんそくは過去の話なのだ。
けれどもそれは点ではなくて、今もなお線で繋がっていることを理解しなければならない。
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