ヤン・シュヴァンクマイエル監督と夫人を追ったドキュメンタリーで、撮影風景やプライベート映像を交えつつ、ロング・インタビューで創作の裏側に迫る。
監督の熱意、ひらめき、溢れる創作意欲に脱帽。その表現は版画、絵画、コラージュ、陶芸と多岐に渡り、「映画」は彼にとって表現方法の1つに過ぎない事が分かった。
数々の映像が挿入されるが、未見の作品ばかりだったので鑑賞の順番を少し後悔…。目に飛び込んでくるシーンは刺激的なものばかりだった。
「オテサーネク」の撮影風景がメインとなり、その創作の裏側だけでも見る価値があった。使えそうな木を拾い集め、粘土の造形、糸の操り、木の組み合わせ、ショットの繋ぎなど、見慣れないアニメーションの制作が興味深かった。
手作りに拘る監督は、CGアニメーションについてどう思うか?
「生気がなく冷たい距離を感じる。あまりに完璧で何かが欠けている。手作りは完璧ではないが、ミスこそ大切」
その言葉が心に残った。CGには無い不完全さが彼の美学なのだろう。
幼い頃の地下室のトラウマや、食べ物を詰め込まれた施設の体験が作品に反映されているんだね。妻との共同作業は微笑ましい光景だったが、これほど深く作品に関わっている事は知らなかった。
触覚を追求したエロティシズムはまさに新境地。優しい普通のおじちゃんに見えるが、頭の中は想像力が無限に広がるワンダーランドだ。