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晩春のtakのレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
4.6
嫁に行きたくない女と嫁にやりたいが寂しい父の話のほのぼのとした小津映画だと思ったらやはり一筋縄には行かず、考えれば考えるほど、紀子がなぜ父周吉にここまで(エレクトラコンプレクスとまで言われる始末)の愛情があるのか、それは亡くなった母の死因とかにも関係しているのか、またはこれは非常に現代的な解釈だが、紀子は実は性的にクローゼットで、周囲に自分のセクシュアリティを出せずに強制的に結婚させられるのに無言の抵抗をしているのか、本当に私は「東京物語」の紀子と同じく、実在してない人物なのに興味が尽きない!いや、生身の人間よりも興味を持っている自分がいる。

ずーっとニコニコ笑って穏やかな原節子の印象がめちゃくちゃ強い小津映画での彼女だが、今作では再婚した、叔父を嫌だ不潔と言った矢先、父親の再婚候補への怒りに満ちた視線や、結婚して嫁になり一人前の女性となる(今の視点で見ると大分トンチキなんだけども)姿、表情、所作。全てにおいて、なぜ原節子が「大根役者」と呼ばれ蔑まれていたのか全く理解できない程の演技と表現力であり、貴方も必ずや紀子に恋をしてしまうだろう。
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