垂直落下式サミング

呪怨 白い老女の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

呪怨 白い老女(2009年製作の映画)
3.8
「呪い続けて10周年!」
てなわけで製作された映画版呪怨シリーズ。正統な続編だが、前作とはストーリーの関連がみられない番外編的な位置付け。粗製濫造によって形骸化していったジャパニーズホラーの原点に回帰しつつも、シリーズの花形である佐伯親子や呪怨ハウス抜きで新たな恐怖のかたちを提示することで、作品を若返らせることがコンセプトだと思われる。
お約束の時系列シャッフルは、今回は過去と現在を振り子のように行ったり来たり。南明奈が事実上の主役で、彼女の人生を軸にストーリーをみせていこうとするのは、それなりに必然があってよかった。
みひろの喉に刃物が刺さって血がゴポゴポするなど、ホラー演出や殺人方法はアイデアが豊富で見ていて飽きない。実家暮らしニートの怒りを体現するムロツヨシによる一家皆殺しは、凶器がバリエーションに富んでいてよかったし、認知症のおばあちゃんが家のなかを徘徊してるのも、その出で立ちの不憫さと、彼女を不気味に感じてしまった申し訳無さとで、やるせない気持ちになってしまった。
これまでのシリーズでは、呪いに殺されるのは若い女性ばかりで、男性の被害者は主にオッサンであることのほうが多かったが、珍しくしゅっとしたイケメンがメインの被害者として出てくる。
ジャパニーズホラーの被害者の多くが制服女子高生であることが多いため、僕にとって呪怨はリョナコンテンツでもあるのだけれど、今回の大見せ場で死ぬ被害者は女子小学生っていう…。ちょっと一線を越えてしまっている。
ロリコンムロツヨシジェノサイド!子供が酷い死にかたするのが、さすがにムリだった…。家庭のなかに助けを求められる大人が不在のまま、小児性愛の男の歪んだ視線に怯えながら、目を覆いたくなるような残虐行為をうけて息絶える瞬間までを克明にみせる。そんなのみたくないのに画面に釘付けにされてしまう。
でも、ジャンプスケアの見せ方は少し無頓着だったように思う。バスケットボールババアは単なる脅かしギミックでしかないのはわかるけど、これじゃあもったいない。気付いたら後ろにッ!はオバケ一人につき一回が限界。何回もやっていいのは、俊雄くんみたいなスターオバケだけに許された特権だよ。
クライマックスのアッキーナはそこそこ頑張ってるのに演技下手に見えるし、何を思ったかラストシーンで生死を曖昧にしたのもいただけない。見境ないのが呪怨なのに。
シリーズのBlu-rayBOXを購入するくらい好きだけど、これも網羅してないのは不満だった。多少値がはってもいいから『白い老女』『黒い少女』を仲間はずれにしないであげてほしかったな。
この連作では、清水崇はプロデュースにまわって、監督は三宅隆太と安里麻里の両名に任せている。新しい布陣で呪怨をどう甦らせるか、ホラーシリーズ中盤にありがちなテコ入れを語る上では外せない作品だ。試行錯誤の歴史もシリーズの一部なのだから、なかったことにはしないでほしい。