けーはち

イリュージョニストのけーはちのレビュー・感想・評価

イリュージョニスト(2010年製作の映画)
3.6
時代の変遷と共に不要になる老手品師を描くフランス製アニメ。50年代、TVやロックなど新しい刺激的な娯楽に目が肥えた観衆は陳腐な手品に目も向けない。少し情をかけたら何でも叶えてくれると思ってついてきた田舎出身のパパ活女子に金を注ぐ甲斐性もなくなり、慣れないバイトでヘマをしたり自分の思う仕事ができなくなり、ほとほと疲れ果てついに廃業を決心した彼が、仕事のパートナーであり生活を共にしたペットであるウサギを野へ逃がすシーンには切なさが溢れる。ただ職を失い尾羽打ち枯らした手品師達の悲壮感だけではなく、次世代に愛を注ぎ、何かを育み与える僅かな光も本作には描かれる。それがパパ活女子を頑張って着飾らせ、魅力的にし、若くて良い男を捕まえさせる、という形の奉仕であったとしても。言葉少なくも省略された線のアニメ芝居で魅せる、少しシニカルでありつつ抒情的で美しい。