ゆみモン

張込みのゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

張込み(1958年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

【2022年12月13日 ∪-NEXT】
以前の鑑賞記録にレビューが無記入だったので、再鑑賞。


オープニングのタイトルクレジットが出るまで、東京の刑事二人が佐賀まで行く汽車での様子がずっと描かれる。どんな事件の誰を追って(探して)行くのか、少しずつ時間を遡るようにして明らかにされていく。
質屋での殺人事件、その主犯格は逮捕されたが、共犯の男が拳銃を持って逃走。その男が、昔の恋人に会いに行くであろうと考え、佐賀で家庭を持っている女の家を、向かいの旅館から張り込む。
ここからいよいよ本編の「張込み」が始まる。

目当ての女は、吝嗇家の銀行員の後妻になり、男の連れ子3人を育てている。版で押したような質素で地味な生活。逃亡犯が危険を冒して会いに来るような女には見えない。高峰秀子がリアルに演じている。
若い刑事には、そんな女の暮らしを見ているうちに、少しずつ同情心のようなものが芽生えてくるのが感じられる。

諦めかけていた時、やはり男は女に会いに来た。これまで見てきた女とは別人のような、生き生きした表情の女を、刑事は見た。
男を逮捕した後、女に「今ならまだご主人が帰って来るまでに間に合う」と促す刑事。本当なら、この女も事情聴取されるべきなのかもしれないが、刑事は女の生活を乱したくなかったのだろう。

犯罪そのものではなく、“張込み”に焦点を絞ったユニークな傑作だ。