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ブラッド・ダイヤモンドのKamiyoのレビュー・感想・評価

ブラッド・ダイヤモンド(2006年製作の映画)
4.2
2006年”ブラッド・ダイヤモンド” 監督 エドワード・ズウィック

何を書いて良いのか判らない、こんな事は初めてだ。
おそらく何を書いても、この映画の凄さは伝わらない。
【シエラレオネ】と言う国、知っていましたか?
25年前まで、そこが内戦状態だった事を知ってましたか?
こんなにも死と隣合わせの国が、世界があった事を知っていましたか?
私は知りませんでした。
劇中のセリフを借りると『神さえ見捨てるだろう』と言われてる国

『ダイヤの価値を決める"4つのC"』
【color(色). cut(カット). clarity(透明度).carat(カラット)】 
”実は5つ目の「conflict(紛争)」が存在することをあなたは知る”。

「自由」「家族」「真実」 彼らはダイヤにそれぞれ違う輝きを見た。
「シエラレオネ1,991年-2002年まで内戦の状態」
1999年のシエラレオネ戦慄の実態が淡々と悲劇的に語られている。
シエラレオネはダイヤモンドの輸出国であり、
当時産出されたダイヤモンドの大部分は国外へ非合法的に密輸出されて
これらが反政府組織RUFやシエラレオネ国内外に存在する
テロ組織の資金源となっている可能性もあり
反政府軍は国内で産出されるダイヤを元手にして武器を買い占める。
死の商人の役割を先進国の人々が身に付ける宝飾品が果たしている
「紛争ダイヤモンド」「血塗られたダイヤモンド」などと呼ばれる。

冒頭、アフリカの夜明けまもなく、
シエラレオネ反政府組織RUFの襲撃を受ける
村の殺戮シーンに襲われます。
村人の手の切断シーンは、直接の描写は避けますが
見るに耐えません。

反政府組織RUFに拉致され捕まったソロモン・バンディ(ジャイモン・フンスー)はダイヤ採掘の人足となり、ダイヤモンド採掘場での労役を強いられていたが、巨大ピンクダイヤを見つけ、隠しました。
その後、ドサクサがあり、牢に入れられます。
巨大なピンクダイヤモンドを見つけたことを不運な出来事から
同じ刑務所に入れられていたダイヤモンド密売人の
ダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)が小耳に挟み、
そのピンクダイヤを何とかモノにしようとするところから、
話は動き出します。まぁ、これだけの事を、ただ文字で見ると
何のことは無いような気がしますが
その背景にあるシエラレオネの政府軍と反政府組織との
紛争が絡んでくることから

ダイヤ密売人アーチャーと息子を連れ去られたソロモンのふたりの
ダイヤと家族を求める冒険談のような味付けがなされている。
アーチャーは密輸に関わっているとはいえ早く儲けて
アフリカの地を去りたいと願っている。
そのためにはきれい事もいっていられない。
ソロモンが見つけた巨大ピンクダイヤを探す、一方のソロモンは
何よりも家族を守りたいと願う普通の父親で
ダイヤなどはどうでもよい。
この二人の対立がドラマを生み出しいく。

そこにそのダイヤを売りさばく組織を告発せんとする
女性ジャーナリスト.マディー(J・コネリー)を絡ませる
ダイヤ利権構造を暴くべく取材に打ち込むマディーとアーチャーが
シエラレオネのビーチバーで出逢った時。運命の歯車が勢いを増して…
反発しあいながらも徐々に惹かれ合っていく2人の距離感がたまらない

好きな女優さんの1人であるイギリス人ジャーナリスト.マディー
(J・コネリ)ーも、世界の紛争地で取材する役に
強くて、賢くて、優しくて、とても美しくて。
ダニー・アーチャー(R・ディカプリオ)はアフリカ生まれの
白人の元傭兵上がりのダイヤモンド買い付け商人。
暗い過去を持ちつつ、たくましく生きてきた・・・
と言えば聞こえはいいけど。お金が全て。人を信用せず
人を愛することもなく生きてきたドラスティックな男。

そして衝撃のラスト。
急勾配の絶壁を登るも、力尽きるアーチャー。
その彼を当然のように背負い、力強く上るソロモン。
私は、今まで守りにいたソロモンが、この時、とても力強く見え、
アフリカは、彼が持つような底力で立ち直っていってほしいと
願ったのでした。
しかし、アーチャーには最期の時が迫っていて、
横取りしようとしたダイヤをソロモンに返しました。
「息子と家に帰れ…….」
何気ない言葉ですが、私は、このときのアーチャーの気持ちを思うと
号泣です。
アーチャーは、この南アに生まれながらも、両親を理不尽に殺され、
帰る家も、家族もいないのです。
だから、せめてソロモンには、家族の幸せを取り戻してほしいと
願ったのでしょう。
好むと好まざるとに関わらず、生きるために“紛争ダイヤモンド”を
扱ってきたアーチャー。
国外脱出後のソロモンたちのことを、電話でマディに託しました。
そして、親子が逃げ切れるように、自らが盾となって
追っ手に応戦したのです。
息絶える間際、血にまみれたアーチャーが手にしたアフリカの土。
その土は、アフリカ人の血が染みているのだ、とも……….。

ディカプリオの取った選択が、悲しい。悲しすぎる。
きっとこれでディカプリオはようやく
心安らかに天国に行けるのだと思う。
瀕死の状態でコネリーにかけた最後の電話に涙です。
今、素晴らしい景色を見ているよ、君と見たかった…
[また来世で恋をしよう]そう言っているようでした。
ディカプリオの演技は、細やかでウマイな~と思っていましたが、
特に印象的なシーンでした。

アフリカの国々内戦では、子供たちが拉致され、洗脳されます。
そして、戦闘マシーン化され、内戦に利用されるのです。
日本で言えば、中学生前後の子供がライフルやマシンガンを持たされて村々を襲撃し、村民を殺戮させられるという「生き地獄」のような
世界があります。アフリカにはそんな少年兵が数十万人いるそうです。

またシエラレオネはエイズなどのために
国民の平均寿命が40歳半ばだ、ということで
世界一寿命の短い国の実態を世界一寿命の長い国日本人が
映画を通して知る。格差社会の真髄。

ジャーナリスト役のジェニファー・コネリーの熱演も見逃せません。
二児の母親で、とても36歳には見えない美しさは、ノーメイクに
近く、彼女の瞳こそダイヤモンドの輝きでした。

コネリー演じるジャーナリストの取材を受けたディカプリオが
「この映像を世界で流せば、何かが変わりますか?」
それに対してコネリーが「多分、何も変わらないわ」と
答えるシーンがあるが
それはきっと真実なのだろう。
でも、この作品を観て何かを感じて、何がしかの行動を起こす人も
きっといると思う。映画が世界を変える可能性だって
ないわけじゃないのだ。
Kamiyo

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