Kamiyo

地下室のメロディーのKamiyoのレビュー・感想・評価

地下室のメロディー(1963年製作の映画)
4.0
1963年”地下室のメロディー”監督アンリ・ヴェルヌイユ
脚本 アルベール・シモナン ミシェル・オーディアール
アンリ・ヴェルヌイ

ご存じジャン・ギャバンとアラン・ドロンの泥棒映画
「地下室のメロディー」
ミッシェル・マーニュのカッコいい音楽と、ルイ・パージュの印象的なモノクロ映像(構図がカッコいいです!)、そして語り草のエンディング!
老ギャングのシャルル(ジャン・ギャバン)は出所後、刑務所で知り合ったフランシス(アラン・ドロン)と組んで、カンヌのカジノから10億フランを強奪する計画を立てる…。フレンチ・ノワール 傑作!

…あらすじは
5年の刑期を終えて出所した老ギャングのシャルルは、どうかもう足を洗ってほしいという妻ジネット(ヴィヴィアーヌ・ロマンス) の懇願を振り切って、旧知の犯罪仲間のもとを訪れると、カンヌにあるカジノの現金を強奪するという新たな犯罪計画に着手する。
シャルルは、刑務所内で知り合った青年フランシスとその義兄のルイ(モーリス・ビロー)も仲間に引き入れ、慎重に策を練った末、いざ計画を実行に移す。彼らはみごと大金を盗み出し、完全犯罪は成功したかに思えたが…。
今回観て印象に残ったのは、フランシスの義兄ルイの実直そうな自動車修理工だ。
彼は、決行直前になって「俺は降りる」と言い出すのだが、考えに考えた末に次のように言う。
『こんなに簡単に大金を手にしたら、俺はダメになってしまう。自分の仕事だけはキチンとやるが、分け前はいらない…』。。。。 「悪銭身に付かず」の論理だ。
この論理が結末に繰り広げられる

最大の目玉はアラン・ドロンとジャン・ギャバンというフランス映画界の二大スターの共演と言うところです。
アラン・ドロンは28歳、ジャン・ギャバンは59歳です

まずは、シャルルを演じたジャン・ギャバン 片岡千恵蔵みたいな渋い重厚な迫力も凄いものがあります
『望郷』から約15年。だいぶ貫禄がつきましたが、かつてディートリッヒも惚れ込んだというあのしゃがれ声と眼光の鋭さは、健在です。
もう若くなくタバコが似合うスターの一人だとも思います。

アラン・ドロンが素晴らしくカッコいい!
カンヌの超高級ホテルに金持ちのプレーボーイの扮装で現れるシーンの男前ぶりは男でも惚れ惚れするほど、
『太陽がいっぱい』のこの世のものとは思えぬ美しい男ぶりが、まず浮かびます。ここでもその二枚目ぶりは見事です。腹に一物も二物も抱え込んだ頭脳明晰で、野心的な男を演じさせたら絶品です。

あのラストシーン!話を交わす警察と目撃者のすぐ手前に座るドロンと、プール向かいから見守るギャバンの構図に緊迫感が止まらない。その後の水中のバッグからゆらゆら浮かび出てプール水面を埋め尽くす札束の画。それを見て脱力するドロンと、平静を装い顔を覆うギャバンの対比。

終盤で観念したフランシスは現金の詰まったバッグふたつをプールに沈めます、バックを一時的に隠そうとしたのでしょう、そんなことしても、やがてプール客が増えてすぐバレます。。。。しかしその後のオチのニクいこと!
いや、もうどうしょうもないと観念して、大金は諦めて敢えて騒ぎを起こして逃げるきっかけにしようとしたのでしょうか?
でもそこまでフランシスは頭は良くないのは確かです

シャルルの驚愕と自分の人選の誤りへの後悔がない交ぜになった表情がサングラスをして微動だにしなくても分かります、ジャン・ギャバンの演技力が半端なく凄いです

二人は騒ぎに乗じて、ホテルから逃げおおうせたのでしょうか? 。。。。なんて野暮なシーンはなく
プール一面に浮かぶ札束の映像に、”FIN”の文字が控えめにでるのがまたカッコいい

このラストシーンは、「太陽がいっぱい」だとなぜか思ってた。プールで不自然に横になるアラン・ドロン。

名作「死刑台のエレベーター」と題名がよく混同されがちです。だってどちらの作品もエレベーターが重要なシーンになりますし、メロディーもどちらの作品でも印象的なんですから、「死刑台のエレベーター」は1958年の巨匠ルイ・マル監督の作品で、マイルス・デイヴィスの音楽が特に有名です
本作は1963年のアンリ・ヴェルヌイユ監督の作品です。こちらも音楽で有名、映画音楽全集には入っていることはあまりないのですが、ワンフレーズ聴けば誰もが聴いたことがある!となるはずです。
TVでホンダの「プレリュード」のCMで「地下室のメロディのテーマ曲が、記憶に残っている。
『男と女』や『ロシュフォールの恋人たち』など、2度3度と耳に馴染んだ名曲に思いがけず出くわせるのも60年代フランス映画の楽しみのひとつである。

もう一つ
池波正太郎の鬼平犯科帳の盗賊の元ネタは本作かも?
大店のお屋敷の図面を入手してなんてお話がありました
Kamiyo

Kamiyo