Kamiyo

雨の訪問者のKamiyoのレビュー・感想・評価

雨の訪問者(1970年製作の映画)
3.8
1970年 ”雨の訪問者” 監督 ルネ・クレマン
脚本 ジャン・セバスチャン・ジャプリゾ
製作 セルジュ・シルベルマン
フランス映画を観たという満足感がある

フランシス・レイのミステリアスなテーマが流れる中
雨の日、バスから 乗客は一人だけ、レインコートの男が
赤いバッグを持って閑散とした町に降りる。
この導入部からルネ・クレマンの魔術にはまってしまう。

その不思議な男を雨にぬれる窓越しに見ている女マルレーヌ・ジョベール。
不思議な男は異常者で彼女は尾行され、自宅に忍び込み メリーに強烈なレイプするシーンがある。訳も分らぬまま、いったんは打ちのめされたメリーだったが、
意識を取り戻すと男はまだ地下室にいて不敵な態度をとる。隙を見て不思議な男をショットガンで撃ち殺すと、警察と夫に電話をするが、今の生活が瓦解するのを恐れてついに彼女はこのことを言い出せなかった・・・。
死体を車にひきずり上げて運び、海に流してしまう。
翌日ドブスと名乗るアメリカ人(チャールズ・ブロンソン)がメリーの前に現れ、聞いた。
「なぜあの男を殺したのか?
ミステリアスな駆け引きが続いていくうちにメリーは心を少しだけ開くがドブスは事件の真相に固執する。
それを徐々に解きほぐす優しい笑顔のブロンソン。

ラストで、ドブスは夫とともに海外へ行こうとするメリーを訪ねて「金も死体も見つかった。もう真相が解ったところで誰も喜ばない。」と言ってただ、ボタンを返し立ち去るのだ。
そしてドブスが歩きながら癖でクルミを放り投げると
通りの建物のガラスが割れる。
劇中で「クルミが割れずにガラスが割れると愛している証拠だ」というのが何度か出てくる。
ドブスは微妙な表情で彼女の車が去った方を一度眺めて
歩き出す・・・。
ラストシーンのブロンソンの表情がいい味を出していて印象に残る。こんな演出もいかにもだけど洒落ている。

パイロットの若妻役”白のエナメルコートが眩しい” 主人公の名前はメリー、(マルレーヌ・ジョベール)
このジョベールという女優が小柄でさして美人というわけでもないのだけど、ブロンドのショートヘアが可愛らしく
30歳くらいであろうか、まだまだ十分に美しく
少女の面影すら残しており実際に子供っぽい
常にミニスカート(時代を感じる)を身に付けて観客を挑発する。ネームバリューからすれば友人役のジル・アイアランドの方が上だし、主役のブロンソンの妻であったことからも相手役として使われてもおかしくなかった。でも彼女はイギリス人。やはりフランス映画にはフランス女優で、ということだったのだろうか。でもこのジョベールさんがよい。「暗くなるまで待って」のヘップバーンのように一人頑張っていて助けたくなってしまう。

チャールズ・ブロンソンと言うと、決して器用ではないものの、スクリーンに現れるだけで野性味溢れる男臭さを放散する俳優でした。
映画史に残るような名作に主演することはなく、専らその隆々たる肉体を駆使したアクション映画が多かったのですが、年輪を重ねた皺面に口髭を蓄えたその特異な容貌によって独特の異様な存在感があり、特に日本では長年人気を保ち続けています。
日本での彼の人気を決定づけたのは、1970年(昭和45年)にオンエアされた男性化粧品マンダムのCFで、ジェリー・ウォレスの歌う、軽快でリズミカルなBGM「男の世界」も相俟って爆発的なブームとなり、商品も空前のヒットを遂げました。
その同じ年の春に公開されたのが本作です。
僅か数秒間のマンダムCFの衝撃的登場に加え、本作で彼が演じた、渋味と苦味、侠気に少しの妖気を纏ったハリー・ドブス役こそ、彼の野性的な魅力を増幅させ、一気に日本での人気スターの座を射止めたといえるでしょう。

ブロンソンのメイクがアメリカ映画とは違って、おフランスの香りがプンプンしていた。ややカールのかかったヘヤースタイル、メキシカン風の口ひげ、髪の毛や髭の色も真っ黒じゃなく茶色ぽかった。ムキムキの上半身に下着なしで直接白のワイシャツを着る所など。

フランシス・レイのテーマ音楽が最高!
映画音楽の人気曲「雨の訪問者のテーマ」”が最高、撮影がまた良い、「太陽がいっぱい」に似たタッチのフランス映画らしさが映像にある、そしてひなびた南仏の空気感と温かい雨、明るい陽光が美しい
若い頃、レコードで聞いたこの音楽が映画に流れると、
身震いするほど素敵だったのを

ストリーとしても十分に面白いが、サスペンスの謎解き等は本作ではどうでも良いことであって深く説明も掘り下げもしない、可愛い若妻が健気に殺人を隠そうと彼女なりに浅知恵を駆使して悪戦苦闘し、それをチャールズ・ブロンソンが別の目的でその殺人の真相を余裕たっぷりに彼女をからかいつつ、探ろうとする
そのときの二人の間の関係性を巡る空気の微妙な匂いを楽しむそんな映画なのだ、
それにしてもルネ・クレマンはすごいです。
何でもないシーンでもサスペンス味あふれる画面にしてしまう手腕は(それも安っぽくなくてお洒落)、日本映画ではちょっと見ない魅力を感じました。
ムードあふれる上質のサスペンス映画。
最後にニンマリできます!ぜひご覧ください!
Kamiyo

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