華麗なる加齢臭

浮草の華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

浮草(1959年製作の映画)
4.9
【色彩に拘る匠の映像美】
恥ずかしながら、小津作品は「東京物語」しか観ておらず、良かったことは間違いないが、かと言って、クロサワと双璧をなす巨匠であったことは理解できなかった。
それゆえに、この作品もあまり期待せず、選択したのだが、その美意識の高さに打ちのめされた。宮川一夫という、日本を代表するカメラマンが参加したこともあるだろうが、その日本画を彷彿とさせる映像美に感動したのだ。

映画のカメラマンを目指していた友人が、コダック、富士、アグファとフィルムにより色彩が違う、どのフォイルを用いるのかも作品を構成する大きな要素であることを教えてくれた。
この作品により、アグファの色彩が小津カラーと呼ばれていることも知り、すでに鬼籍に入った友人の言葉を思い出した。そして、あの映像美にはアグファでなければ表現できないことを実感した。

トッド・ヘインズ監督「エデンより彼方へ」(2002年)も色彩への強いこだわりがあり、見事な映像美で感動したが、典型的に退色したコダクロームであった。また浮草同様カメラの位置にも細心の注意を払ったカメラワークでもあった。

映画を構成する、色彩やカメラワークにも関心が持つことが出来れば、作り手の熱量が、より伝わってくることを実感した。