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ハッピー フィートのLCのレビュー・感想・評価

ハッピー フィート(2006年製作の映画)
3.6
面白かった。

どこまでも続く雪景色、だけじゃなかったのが楽しい。
音楽とリズムに溢れた物語だけれど、冒険部分も負けず劣らずの迫力がある。
大自然で生き抜くのってやっぱり凄いことなんだなあ。

主人公は、徹底して「外の者」に助けられる。そこがまず面白い。
生まれ育った世界では理解されず、馴染むこともできず、若くして「はぐれペンギン」となる。
ただ、群れからはぐれた者は狙われやすい。主人公もしっかり捕食されそうになるけれど、生き延びることができた先に、広い世界があった。
最初は、自分と同じ形状なのに違う文化を持つ、でも見慣れた雪景色に住む者たち。
そして、自分とは違う姿形をしていて、言葉も通じず、見えない壁で囲いこちらを眺める者たち。
主人公を理解し受け入れてくれたのは、安全な群れの中ではなく、危険な外の向こうの世界だった。

主人公と快く楽しい時間を過ごしてくれたペンギンたちは、スペイン語で歌う。
わかりやすく他国、他文化を表現しているのかな、と思ったら、彼らは主人公と旅立つ時にちゃんと英語で歌うのだ。主人公を追い出した者たちに理解してもらう為に。
届けたい相手を意識していることが、言語の切り替えでパッと把握できるようになっている。台詞でもちゃんと「今の歌はお前らに対して歌ったんだ」とかって言うけれど、この演出には思わずニコニコした。
その後、わざわざ追いかけてきてくれた者を突き放す主人公の側で歌った時も、英語だった。
そして、英語で歌われる世界に彼らがリズムを刻む場面では、スペイン語も混ざるのである。ここは言語だけでなく、「新旧」も融合する。老ペンギンたちの守りたいスタイルと、若人が楽しみたいスタイルが。

主人公が少しずつ成長していく様子が見た目からもわかるようになっているのだけど、胸元の黒い部分、ほんのり蝶ネクタイみたいでとてもオシャレだった。いつか黄色くなるのかな。
お父さん卵落としちゃったもんだから、我が子が変わってるのは自分のせいだと相当思い詰めただろうけれど、妻が断固として「変な子じゃない。かわいい私たちの子」という姿勢でいてくれて、心強かっただろうな。
教祖さまは、主人公の物語を語り継ぐには頼りになりそうだけど、きっと無い知識に群がられることに苦痛もあっただろうし、肩の荷がおりますように。
というか、もう何よりペンギンたちみんな動きが可愛い。特にアミーゴス。尻尾めっちゃ振るやんずっと見てたい。歩く時両手あげちゃうのずっと見てたい。
ちなみに、彼らはアデリーペンギンという種類だと思うけど、「アデリー」は南極大陸の半島(アデリーランド)を見つけたフランス人探検家の、奥さんの名前から来ている。
ペンギン以外の生き物もみんな印象的で、特にシャチさんたちは怖かった。獲物で遊ぶの、素直に「腹が満たされれば良い」以外の考えが働いてることがわかる。そんな者が、水中から迫ってくる。こえぇ。

クレジット画面がとても好き。
黒い世界に白い文字が、奥から手前に流れてくる。それは作中で見た、水中にペンギンたちが描く白い軌跡のようだった。
下から見上げているような、浮遊感にも似た感覚に、ペンギンたちのリズムが乗ってくる。心地良かった。
長老、顔つきからも結構な老齢だとわかるけど、なかなか良い踊りっぷりやん。イケてるじじいだな。
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