狐のろうそく

まごころの狐のろうそくのレビュー・感想・評価

まごころ(1939年製作の映画)
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一編の名作が時勢のために台無しになってしまった典型のようだ。本来ラストシーンは悦ちゃんの信子が足を引きずりながら人形を返しに行く後ろ姿で終わらなければならない。成瀬もそのつもりで撮っているように見える。最後の付け足しの出征風景がこの人間の心情を巧みに映し出した映画を台無しにしてしまった。なるほど戦争というのは人間の繊細な部分を破壊してしまう。その部分を除けば成瀬の映画の中でも隠れた佳品のように思える。