nana

奇跡のnanaのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
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エリセの新作『瞳をとじて』で、「ドライヤー亡き今、映画で奇跡を起こすことは不可能だろう」という台詞があった気がします。
ちょうどドライヤーの『奇跡』が映画館で上映されていたので、この機会に観ることができました。

もし自分が医者で、患者に手術した後「成功したのは私の腕前のおかげかな?それとも信仰のおかげかな?」と微笑みかけたとき患者家族に「もちろん、祈ったからです」と言われたらキレたくなりそうですが。
たしかに信仰至上主義的な内容にはまらない部分もありつつ、とらえ方を変えてみれば、これは人が人と(とりわけ、なんか無理だなと思っていた、理解を避けていた人と)正面から向き合い、対話を試みたことで「奇跡」が起きたのだという考え方もできます。
奇跡が起こるかどうかは、単に信仰を持っているかではなく、希望を持っているか、なのかもしれない。

真っ白な布が風にはためくあの丘が忘れられない。
なんてことない場所、なんてことない部屋を特別なものにしてしまう。
ドライヤーこそ、まさに映画に奇跡を起こす人なのでしょう。
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