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走れメロスのmitakosamaのレビュー・感想・評価

走れメロス(1992年製作の映画)
4.0
太宰治の短編小説のアニメ化。コレが地味に出来が良い!
旧ルパンの大隅正秋が監督で、キャラデザが人狼の沖浦啓之。骨太な布陣だなー。もう作品から漂う男性ホルモンでむせ返るようだよ。
昨今の萌え要素など皆無の硬派作品。誇張の無いアニメーションの堅実さ。

紀元前ギリシャの暴君ディオニシウス2世が収めるシラクサ。
羊飼いのメロスは無実で処刑されそうになる。妹の結婚式に出るため、石工セリネに身代わりになってもらう。

メロスは3日で帰れば身代わりの命は助かり自分が処刑される、という過酷な選択。それでも約束を果たすためにメロスは走る。

やはりディオニシウス2世の存在が素晴らしい。確かに自分本位の暴君だ。
が、決して馬鹿では無いんだよな。ココ大事!
彼なりの理想とする王様のビジョンがあり、それに則った言動にはブレが無い。小憎らしい悪役だが、ちゃんと美学がある。

だからこそ信頼のために命をかけるメロスとセリネの二人と、人を信頼しないディオニシウス2世との対比が見物だ。話はシンプルなのに対立概念がシッカリしているので実に見応えある。

脇を固める王妃や家来、セリネの恋人ライサにも、ちゃんと自分の考えがあるキャラクターだ。細かい描写の巧みさも感心するわ。
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