こたつむり

コピーキャットのこたつむりのレビュー・感想・評価

コピーキャット(1995年製作の映画)
3.7
♪ もう一度会いにゆこう 
  あの時と変わらずに
  きっと君はとびおきて
  噛みついてもいいじゃない

品行方正、公明正大。
まさに「歩く道徳」と呼ばれる僕ですが瑕疵はあるのです。それは無類のサスペンス(ミステリ)好き。ついつい血生臭い物語に反応しちゃうのです。

これは英才教育の賜物でしょう。
何しろ、就学前から土曜ワイド劇場を嗜んでいましたからね。まさしく「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものです。

でもね。言い訳するわけじゃあないですけどね。
サスペンス(ミステリ)って“非日常”の極みなんですよ。要は遊園地に行くのと同じ。退屈で理不尽な現実を忘れることが出来るワンダーランドなんです。

しかも、先が読めませんからね。
ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか。どちらに転ぶのかが分からない…だから、灰色の脳細胞はフル回転。それがサスペンスの醍醐味なんです。

なので、この分野が花開いたのも当然の話。
『羊たちの沈黙』や『セブン』は、当時としては目新しいダークな雰囲気が評判になりましたが、骨格はサスペンスの王道でした。

そして、本作も同様。
過去のシリアルキラーの手口を真似る《コピーキャット》。それを追う刑事と協力する犯罪心理学の博士。この時点でサスペンスの王道ど真ん中。いい感じです。

また、衒いがない筆致なので物語もシンプル。
主人公格が女性同士というのも“恐怖”の輪郭を明確にするには適切な選択。特にホリー・ハンターの小柄さが良いですね。小動物が獰猛な肉食動物に立ち向かうかのようで、手に汗握るのは間違いありません。

それなのに突き抜けなかったのも事実。
先にも書いたように“先が読めない”のがサスペンスの醍醐味だとしたら、その辺りがちょっと足りなかったのでしょう。ただ、1995年の作品として考えたら上々なんですけどね。

まあ、そんなわけで。
『羊たちの沈黙』の陰に隠れてしまった佳作。何故だか鑑賞できる機会も限られているようですが、こういう作品が映画界を支えていますからね。もっと気軽に観れれば嬉しいですね。
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