山岡

故郷(ふるさと)への長い道/スター・トレック4の山岡のレビュー・感想・評価

3.9
劇場版第四作。前作に続き監督はスポック役のレナード・ニモイ。

スポックを復活させたカーク一行が地球に戻る途中、謎の探査機が地球に接近し、地球に急激な気候変動を引き起こす。探査機が発する音波を分析するとザトウクジラに呼びかけていることが判明。しかしザトウクジラは23世紀には絶滅している。カークは20世紀にタイムスリップして鯨を連れ帰る事を計画。エンタープライズクルーとともに前回奪ったクリンゴン船で20世紀のサンフランシスコにタイムスリップし、クジラの強奪作戦を実行する…。

第4作はまさかのタイムスリップもの。テレビシリーズでも「宇宙暦元年7・21」「危険な過去への旅」の2つのタイムスリップものの名作が生まれている。それら2作ではクルーの行動により生まれた時空の捻れの修正が目的となっていたが、本作では時空のねじれを全く気にせず、20世紀を舞台に豪快に暴れ回っている。前年の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の影響を多いに受けたコメディ色の強いタイムスリップものとなっている。特にカークとスポックの水族館見学のシーンでは、時代に合っていない服装で次から次へとボケをかましまくっており、爆笑必至。本作のハイライトといえる。

劇場版三作ではほぼ見せ場が無かったマッコイにスポットが当たっているのも良かった。20世紀の病院内で古い時代の医療をディスりまくり、透析患者に勝手に23世紀の薬を与えたり、不慮の事故で重大となってしまったチェコフの手術に乱入し彼を助けたりと大いに活躍していた。

時代間ギャップコメディとして十分に面白い本作だが、そこに反捕鯨運動をミックスしているのがさらに面白い。鯨に呼びかけを行う探査機、宇宙船内に作った鯨専用の巨大水槽、そしてクライマックスでは鯨二頭を転送という荒唐無稽極まりない展開を次々と味わうことができる。

これまでの劇場版はシリアスなハードSFだった一作目、主要登場人物の死を描いたニ、三作目と割とシリアスめな印象な印象が強かったが、荒唐無稽なコメディも宇宙大作戦の大きな魅力の一つであり、その魅力が大いに発揮された紛れもない傑作である。
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