前半が特に衝撃的だった。
予告編でも話題になった『2001年宇宙の旅』にオマージュを捧げた完璧なオープニングにまずやられる。
そして不気味なバービーワールドのあまりにも高い完成度。バービーの世界観、ドールハウスを極限まで緻密に実写化することで教科書的な女性活躍の理想像のような風景、さらにその先にある男性優位社会の逆転版のような皮肉たっぷりのディストピアをものにしている。
バービーとケンが現実のロサンゼルスに行ってからの展開もギャップコメディとして最高だし、絶妙にリアリティを保ちながら、恐ろしい男社会をユーモアたっぷり描いている。
後半は、ケンが現実の男性優位社会にインスパイアされてバービーワールドを男が主役のケンダムつくるが、バービーたちが団結して女性が主役のバービーワールドを取り戻すというもの。この後半の展開から前半にあった切れ味の良さが鈍り、映画の軸がどこにあるのか分からなくなり、個人的には興味が少し薄れてしまった…。
とはいえ最高のブラックユーモアと見たことのない不気味可愛いビジュアルセンスが融合した唯一無二のの一本であることは間違いない。