櫻イミト

華麗なる一族の櫻イミトのレビュー・感想・評価

華麗なる一族(1974年製作の映画)
3.5
山本薩男監督による「戦争と人間」三部作(1970~1973)の次作。山崎豊子の同名経済小説(1973)の映画化。関西の財閥一族を軸に、政財界で富と権力を追い求める人々の野望と愛憎を描く。

万俵家の当主、大介(佐分利信)は、阪神銀行を核に鉄鋼業、不動産業等でのし上がった万俵財閥の総帥。現在全国第10位の阪神銀行をさらに押し上げるため政財界に手を回し上位銀行の吸収を目論んでいた。一方、長男の鉄平(仲代達矢)に対し、その出生の疑惑にこだわりを持ち続けていた。。。

「戦争と人間」を観て財閥に興味を持ったので山本監督作を引き続き鑑賞。

日本政財界版「ゴッド・ファーザー」のような風合いだった。総理大臣と裏の黒幕の支配下でうごめく政財界の野望と駆け引き。政略結婚が当然のように行われる世界が豪華キャストで描かれなかなか見応えがあった。特定のモデルはないフィクションではあるが、取材を重ねて構築したストーリ-はさもありなんと思わせる説得力があり、日本政財界の裏側や財閥の権力に触れる思いがした。

ただ、物語の流れを変える大きな事故の発生がどれも唐突なのが、昭和のテレビドラマ的な強引さを感じさせ少し残念だった。

登場人物たちの根回し合戦の様子に、自分の営業職時代の経験を思い出した。出世を望むタイプなら根回しに生きがいを感じるのだろうが、自分は違うので苦しいばかりだった。本作では、出世そのものよりも社会的意義に走るリーダーは敗北していた。それが資本主義社会だと描こうとしたのだと思う。ふまえた上でいかに自己実現していくかをあらためて考えさせられた。
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