王冠と霜月いつか

獄門島の王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

獄門島(1977年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

季違い、じゃが、仕方がない

もう何度も観てるけど、レビューを挙げていなかったので、配信で再鑑賞。

改めて観ると、冒頭10分の状況設定が完璧な脚本で流石だな~久里子亭、と感心します。エヴァンゲリオンでもオマージュされている黒バックに白抜きの巨大明朝体のクレジットタイトル『脚本・久里子亭』ですが、ご存じの方も多いでしょうが、市川崑監督と奥様で脚本家の和田夏十さんの共同ペンネームですね。私は読み方がわからず、(アガサ)クリスティの当て字由来だと知ったのはしばらく経ってからでした💦

冒頭の獄門島の由来から、
主要人物の紹介、金田一耕助が島に来た目的、案内された部屋に置いてある三枚の俳句が貼ってある屏風、島に流れ着いた海賊の男…。完璧な流れで、これから起こる陰惨な事件が暗示されます。

同監督の悪魔の手毬唄も見立て殺人ですが、悪魔…は、横溝正史先生が見立て殺人優先で、犯人像をキチンと設定されてないので、犯人がサイコパスで多重人格障害の様なキャラクターに成ってしまっていて、それをなんとか、岸惠子さんとの共同作業で愛故の殺人事件に切り替えています。獄門島は、実行犯が鬼頭嘉右衛門の遺言に則って行う見立て殺人ですので、その点無理はありません。ただ、もし、あの三人の妹に本鬼頭を継がせたくなかっただけでしたら、法律的に彼女達にその能力がないと証明すれば良いだけなので、殺さなくても良かったんだと思います。恐らく、犬神佐兵衛翁の遺言と一緒(市川崑監督のセルフリメイク版にレビュー書いてます。)で、鬼頭嘉右衛門は全てを亡き者にしたかっただけだったんでしょう。死して強まる念が、恐ろしいタイミングの一致を実現させたのだと思います。

『偶然です、恐ろしい偶然です。恐ろしい偶然が何度も重なったんです....』

息子を娘を思う親の愛は時に美しく、時に恐ろしいのですね。

スコアは、4.5。是非とも脚本と映像の美しさを味わって欲しい作品です。