HAYATO

お早ようのHAYATOのレビュー・感想・評価

お早よう(1959年製作の映画)
4.0
2024年11本目
巨匠・小津安二郎監督作
郊外の新興住宅地を舞台に、テレビを欲しがる元気な子供たちにふりまわされる大人たちをコメディタッチで描いた作品
中井貴一さんは、お父様(佐田啓二)が出演した小津映画の中で、本作を1番気に入っているそう。
劇中で子どもたちがオナラ遊びに興じる場面が出てくるが、「オナラ」を使ったギャグは小津監督がサイレント時代からずっと温めていたアイデアだそうなので、本作における屁は満を持して放たれたものである。
互いの住宅に好き勝手出入りする昔ながらのご近所付き合いの光景が淡々と描かれていて、非常に近い距離感だからこそ、些細なことで噂が広まり、人間関係にヒビがはいる様がすごくリアル。
テレビを買って欲しいと駄々を捏ねる兄弟が、両親に「少しは黙ってろ」と言われてしまったことで、結託して完全に黙り込む姿が微笑ましく、家庭内だけでなく家の外でも全く口を開かないその徹底ぶりに笑わされた。
大人の何気ない会話こそ無駄じゃないのかという子供達の疑問に対して、福井が漏らす「無駄が世の中の潤滑油になっている」というセリフに確かになぁと思わされ、何気ない会話の積み重ねが豊かな人間関係の広がりに寄与していることに気付かされた。
小津作品常連の笠智衆さんは、毎度のことながら唯一無二の存在感があり、親近感を抱く佇まいと柔らかな演技がやはり最高!
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