鍋山和弥

極道の妻(おんな)たち 情炎の鍋山和弥のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

今作は、今までの、『極妻』シリーズの中で、一番、『極妻』らしくなく、一番、心理描写に、うるさい作品だったような、気がする。その象徴が、『カワモト』、『エイギョク』、『ランコ』の三角関係と、『カワモト』の、極道らしくない風貌、性格である。この作品も、これまでの、『極妻』シリーズと、同じく、ケジメと言う名の、復讐劇が、ラストに来るのだが、今作は、復讐される『カワモト』が、心根は、家族を愛する、優しいお父さんで、やはり、極道らしくない。そんな『カワモト』が、本当に愛したのは、誰なのか?『ランコ』か?『エイギョク』か?僕が思うに、それは、『エイギョク』だったと思う。なぜなら、『カワモト』の最後の選択が、『エイギョク』を、撃つことではなく、自殺だったから。つまり、『カワモト』は、『エイギョク』に、生きて欲しかった。『ランコ』を、撃たなかったのは、『カワモト』が、愛したのは、『ランコ』ではなく、子供達だったから。『カワモト』は、『エイギョク』に、生きて欲しくて、『ランコ』の、子供にも、幸せになって欲しい。だから、『カワモト』は、『エイギョク』も、『ランコ』も撃たず、自殺した。『ランコ』を撃っても、母親は死に、父親は懲役となるから。つまり、子供に、両親が、どちらも、いない状態になるから。この辺りが、やはり、『カワモト』が、極道らしくないし、この作品独特の、見せ場なように思う。この辺りの心理描写が、繊細で、『極妻』だけど、美しさすら感じる。きっと、新しい試みだったのだろう。
鍋山和弥

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