イチロヲ

怪人カリガリ博士のイチロヲのレビュー・感想・評価

怪人カリガリ博士(1961年製作の映画)
3.5
パンクした自動車を乗り捨てて、人里離れた豪邸まで辿り着いた女性が、人間観察を嗜好している奇怪な博士に監禁されてしまう。「サイコ」の原作者ロバート・ブロックが脚本を手掛けている、サスペンス・ドラマ。

意味も分からずに敷地内に閉じ込められたヒロインが、意味も分からずに屋敷のコミュニティに加わる。鑑賞者にも余計な情報を開示せずに、サスペンドされた状態のままで物語が進行する。そのため、煙に巻かれていく感覚がダイレクトに伝わってくる。

鑑賞者に対するミスリード狙いは、後に製作された類似品をある程度鑑賞していると、容易に先読みすることが可能。「これって、こういうことなのでは?」という予測通りに着地するが、終局におけるバッド・トリップからの畳み掛けは見事なもの。

ヒロインがコミュニティに参加させられる過程と人間観察のために奇行を繰り返す博士の描写に、どこかマルキ・ド・サドとの重複を感じさせられる。「頭がイカれた人を映画の中で観ることほど楽しいことはない」の法則を楽しむことができる秀作。
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