藻尾井逞育

台北に舞う雪の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

台北に舞う雪(2009年製作の映画)
4.0
「誰にも捜されなかったら悲しい」
「愛することと夢は切り離せない」
「でも信じてた。雪が降れば俺の望みはかなうんだって」
「君もお袋も俺を傷つけてはいないよ。愛する人に傷つけられることはないんだ。君がいなくなるのは寂しいけど傷ついてはいない」

新人歌手のメイは将来を嘱望されていたが突然声を失う。メイは逃れるように台北を後にし、山あいの菁桐までやってくる。ここで知り合ったモウは、孤児であった自分を育ててくれた町の人々への恩返しに、雑用を引き受けている青年だった。モウの気遣いや優しさにメイは癒されていく。

台湾北部を走るローカル線平渓線の終着駅、菁桐駅周辺がこの映画の舞台です。美しい渓谷とノスタルジックな街並みがとても印象的です。この柔らかな空気の中、声の出なくなった新人歌手メイが心優しい青年モウを通して癒されていく様を、繊細に描きだしています。お互いを思いやりながらもやがて二人はすれ違っていく。モウと一緒になれば自分はきっと幸せになれる、そのことはメイ自身が一番わかっている。でも自分の夢のためにはどうしても別の選択をしてしまう。「愛することと夢は切り離せない」という台詞がありましたが、二人のすれ違いをよく表していると思います。このままじゃチェン・ポーリンさん扮するモウくんがただのいい人になっちゃう、と思っていたら、今度は「捜されなかったら悲しい」って人探しの旅に出てしまいます。どれだけモウくん、いい人なんじゃい⁈

平渓線沿線は毎年旧正月の時期にランタン・フェスティバルが開催されることで有名です。映画の中でも登場した次々と夜空に浮かび上がる天燈の幻想的な風景は、実際に地元ボランティアが一つ一つ手作りした天燈を観光客が上げたものを撮影したそうです。この映画の他にも、映画「あの頃、君を追いかけた」でも遠距離になったコートンとチアイーがクリスマスに再会する場面で登場しますね。こちらも二人が願いを書いた天燈を飛ばすシーンが印象的ですが、4つ手前の十分駅ではランタン・フェスティバルが行われる旧正月以外でも一年中天燈をあげられるそうです。先日、JTBから海外旅行パンフレットが届きましたが、台湾旅行ツアーでは平渓線沿線もコースに入っており、十分駅の天燈上げも入っていました!今は震災で大変かもしれませんが、落ち着いたら是非この地を訪れ天燈を上げたいですね。幻想的絶景、ランタン・フェスティバルに行ってみたい!

台湾加油!