あなぐらむ

野獣死すべしのあなぐらむのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1959年製作の映画)
4.0
白坂依志夫によるホンは少し堅さを感じるが、冷徹なニヒリズムと隠された暴力の薫りで貫かれており、より大藪春彦らしさを感じさせる。
無表情から笑みを見せる所で狂気を滲ませる仲代の演技(老女の花売りを躍らせるシーンとか素晴らしい)と、老刑事・東野英二郎、伊達のポジ側の若者

刑事・小泉博が印象に残る。
冒頭に60年安保に反対する学生の映像があり、白坂脚本はそれさえも左翼の就職活動だと叩いてみせて、真に人が野獣となる契機は社会の欺瞞を撃ち抜く

時だと言わんばかりである。須川のドライな演出とモノクロ映像の夜の闇が、ノワールな味わいを色濃く感じさせる傑作。
仲代達矢の芝居が全編素晴らしく、かつ原作のテイストを持っているので、松田優作+村川透の振れ幅の大きい角川版の仕上りよりは初心者向けかなとも思う。