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野獣死すべしのmitakosamaのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1959年製作の映画)
3.9
野獣死すべしの初の映像化作品。優作版が名作と名高いが、今作・仲代版も中々の傑作だ。
所見は今は無き浅草東方のオールナイト。多分3~4回は見てる。

主人公・伊達邦彦に仲代達矢。只でさえ眼力の強い仲代が瞬き一つしない。
もう一人の主人公とも言える若い刑事に小泉博。誠実そうで仲代と対になる存在だ。

戦後10数年の話なので、異常快楽殺人という概念そのものが新しかった時代だ。
伊達邦彦は刑事殺しから始まり、賭博の元締めのギャングも襲撃し大金を奪う。
そんな伊達だが大学では成績優秀で聡明な院生。教授も名前貸しで仕事をやってくれるのでお気に入りだ。
刑事殺しの犯人を追う警察の捜査は難航。科学主義の刑事部長に対し昔気質の老刑事(東野英治朗)はカンで捜査。小泉演じる若手刑事も直感型だ。
実直な若手刑事だが、私生活は貧しく上手くいっていない。これも伊達と対照的。

そんな中、犯罪心理学のレポートを書いた学生が、たまたまバーで一緒になった伊達だとわらり、彼をマークすることになる。
バーで金にモノを言わせ花売りのお婆ちゃんに躍らせる伊達。仲代の形相が凄い。

そして中盤の山場で刑事がボクシングジムに伊達を訪ねるシーン。今作の最大の見せ場だ。
お互い笑顔でやり取りするが内心バチバチだ。笑いながら握手する二人の間にスパーリングをしてる姿が垣間見える。
奥に見えるボクシングで二人の内面を見せる素晴らしい演出センス。

結果としては伊達が勝ち逃げする展開だが、刑事たちにもまだまだチャンスがある余地を見せて終わる。余韻があって良いラストだ。

伊達の狂気は仲代版も負けていないぞ!
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