このレビューはネタバレを含みます
仲代達矢の伊達邦彦はよく笑います。しかし眼が笑いません。カッと見開かれ、ギラギラと輝く様は、狂気を覗かせています。まさに野獣です。
松田優作版は死にとりつかれているのに対し、仲代達矢版は生のエネルギーに満ちています。殺人を犯す理由も私利の為。しかし目的を達すれば金をあっさり手放す潔さ。
恋人を殺さない辺りは、狂気の面で一歩先を行く松田優作版とは対照的で、僅かな人間味を感じさせます。
感情移入できる要素は微塵もありません。そんな内容ながら観させる力は素晴らしいです。製作者、俳優の熱を感じる、生と狂気に満ちた映画でした。