魂を込めて演じているに違いない田中絹代に圧倒される。台詞一つ、仕草一つにひれ伏すしかない。
彼女自身も十代の頃から家族の生活を支えるために働き詰めであり、からゆきさんとはやることが違えど、自身と重なるものを感じていたのではないだろうか。
大女優に順位はつけられないが、老婆を演じたら間違いなく1番。
あ、高橋洋子も可愛くて美しい。仮に過去パートだけの作品だったとしても称賛されていただろう。
からゆきさんの存在については、本作でも描かれるように、当事者やその子孫たちも天草、島原も国も包み隠したい負の歴史であるのは事実であり、現代にほじくり返して語るものではない。しかし、江戸、明治期から日本人女性が人身売買によりアジアに進出していたという、改めて語られることのない歴史を描いた本作は貴重である。からゆきさんのことは頭の片隅に記憶しておきたい。