櫻イミト

殺人地帯U・S・Aの櫻イミトのレビュー・感想・評価

殺人地帯U・S・A(1961年製作の映画)
4.0
サミュエル・フラー監督が中期に撮った社会派フィルム・ノワール。原題は「Underworld U.S.A.(アンダーワールド U.S.A.)」、こちらの方が内容に合っている。

父親の殺害を目撃した14歳のトリ―(クリフ・ロバートソン)は犯人のギャング4人への復讐を誓う・・・成人し復讐を実行に移すトリーを追いながら、アメリカを闇で支配する巨悪の構造を浮き彫りにする。。。

序盤は復讐系のB級ノワールと思いきや、気が付けばアメリカの闇に潜入していく濃密な99分だった。主人公の完全復讐劇を縦軸に、親代わりの居酒屋ママと裏社会を生きてきた恋人の慈愛組と、反対に子供を非情に殺害する巨悪組を配置。登場人物のデティール描写の細かさが本作の射程距離を広げ、奥深さに繋げている。

子供がいないため部屋中に赤ちゃんの人形や写真を飾るママ。対して「国内には10~15歳の子供が1300万人以上いる。学校周辺に麻薬売人を増やせ」と命ずる闇のボス。この弱き善と強き悪の間を、自分の目的のために一人まい進する主人公の魂は14歳の時と変わらない無垢のままに見える。クリフ・ロバートソンは好演していると思うが面構えが成熟しすぎで、これをジェームズ・キャグニーあたりが演じていたら大傑作になったのではないか。

それにしても、フラー監督の脚本・演出共に本当に良く出来ていて、元ジャーナリストの底力も存分に発揮した傑出作だと思う。
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