ごろちん

水俣一揆-一生を問う人々-のごろちんのレビュー・感想・評価

水俣一揆-一生を問う人々-(1973年製作の映画)
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「あなたも人間なら答えてくださいよ!」

原一男監督『水俣曼荼羅』が行政との闘いなら、この映画は企業と被害者の闘いを記録したドキュメンタリー。

争点は患者の補償をどこまで行うか。加害者であるチッソ株式会社は会社の体力を盾に被害者の全面的な補償を認めようとしない。会社が潰れたら補償を継続して出来なくなる、というのがチッソ側の言い分。確かにそれは理解出来なくもない。が、観ていて感じたのは企業側の誠意の無さ。行政の局外者のような冷たい対応に比べたら幾分マシだが、頑なに対立姿勢を崩さず、心の底から詫びる気持ちが経営陣の言動からは感じ取れなかった。

被害者が机に乗り、ぶつかりそうな距離で社長に訴えても視線は虚ろで反応が鈍い。このときの島田社長は感情を封印しているかのように見えた。恐らく社長の頭の中は意図して従業員と自社の行く末で埋め尽くしていたのではないかと思う。

被害者、加害者、双方の立場から水俣病という人災を考察出来る良いドキュメンタリー映画だった。
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