「20世紀になお〈聖〉が存在するなら、
もし映画の聖地があるならば、日本の監督小津安二郎の作品にこそふさわしい。
小津の作品は最も日本的だが国境を越え理解される。私は彼の映画に世界中のすべての家族を見る。私の父を、母を、弟を、私自身を見る。
映画の本質、映画の意味そのものにこれほど近い映画は後にも先にもないと思う。小津の映像は20世紀の人間の真実を伝える。
我々はそこに自分自身の姿を見、自分自身について多くのことを知る。」
ヴェンダース監督自身が冒頭で語る。
80年代の東京は小津の映画とは変わってしまっている。(2023年の東京はこの映画の後さらに変わっている。)
パチンコ屋、竹の子族、ロックンロール、垢抜けない東京。
笠智衆と小津映画のカメラマン厚田雄春を撮影するヴェンダース。
知り合いのプライベートビデオを見ているような気になる映画。
ドイツのヴェンダース、フランスのクレール・ドニ、フィンランドのアキ・カウリスマキ、アメリカのジム・ジャームッシュ、ヴィンセント・ギャロ、イランのキアロスタミ、トルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン、韓国のホン・サンス、台湾のホウ・シャオシェン等
あげればキリが無いが、様々な国の監督が小津をリスペクトしている。
何故なのか考えると、冒頭の言葉が一つの答えのように感じた。