デニロ

望郷子守唄のデニロのレビュー・感想・評価

望郷子守唄(1972年製作の映画)
3.0
ものすごく変な話。

背中に彫り物のある自称侠客の高倉健が近衛兵として入隊。狂喜乱舞の母親浪花千栄子でございます、天子さんをお守りする大切なお役目、くれぐれも短気を起こして喧嘩なんかしてはいけません、と戒められる。配属後、着替えの際にその刺青が発覚して近衛連隊大騒ぎ、なんであなたはんが近衛なの、と軍隊式にいじめを受けるのだが、母との固い約束、ぐっと我慢を重ねます。そんな姿をジッと見つめる軍医藤田進もここは我慢のしどころだと何故か味方になってくれるのです。

が、ある日、自分の代わりに同僚新兵がめちゃくちゃにいたぶられている姿を見て逆上、上官をぶちのめし更に剣を奪い刺そうとする刹那、藤田進に叱咤され思い止まる。高倉健は、軍隊の規律を破った以上軍法会議に掛けられたうえで弁明の機会を与えよと求めるだが、面倒くさくなった軍は高倉健さえいなければ事は済むと病気除隊という名分をちらつかせその意に添うように交渉を始める。じゃあ、連隊長が土下座して詫びれば出てってやるよと相手の足元を見て、連隊長に土下座させる高倉健。意地悪な侠客。

除隊した高倉は同じく退役し開業した藤田進の下に挨拶に赴くと、どこにも行くところがない、なんでもするから職を紹介してくれと甘えて頼み込む。何故かその願いは聞き入れられて病院の雑役をすることとなる。もはや母親に合わせる顔もなく、成績優秀にて医務班に変わったと虚偽報告。笑わせます。

浅草。東京一の繁華街。いくつかの一家が看板を掲げます。そのうちのひとり天津敏に見込まれて、天下国家のお役になることを手伝ってくれと頼まれると、わしゃ侠客ですけん、と二つ返事でストライキ中の工場に丸太棒を担いで単身乗り込み大暴れ。夜、病院に帰宅すると工場での怪我の治療をしていた工員が昼間の乱暴者の噂をしている。互いに顔を見合わせると、こいつだ、と一触即発。事に気付いた藤田進は高倉健を叱り飛ばして追い出してしまう。無論、高倉健はお国のためだと思っているんで、藤田進の怒りは分かりません。

そんな話なんですが、唐突に天津敏に図られ懲役になっていた池部良が登場します。池部良は不在の間、天津敏に自分の組の親分を殺されてしまい恨み骨髄で復讐を誓っております。ああ、ここから喧嘩出入りを紡いでいくのだなと、加えて、池部良は藤田進の息子であるということが紹介されて、というより無茶苦茶でございまするがな。半端モンの高倉健に目をかけた理由がここで分かるようになっております。それにしたって、そんな設定がいるんだろうか。画面を目で追いながら無理矢理だなあ。

父親に詫びを入れようと支度をしているところを天津敏の配下の者に襲われ横死した池部良の姿を見る高倉健。偶々上京していた浪花千栄子/男なら、やる事があるだろう。/天津敏の下に単身乗り込み討ち果たす高倉健。ラスト。泣き惑う母浪花千栄子を背負い警察に出頭する血まみれの高倉健。

1972年製作公開。脚本野上龍雄。監督小沢茂弘。

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