成瀬のリアリズムが冴え渡っている。
高峰秀子は寧ろ脇役に徹し、オールスターキャストが織りなす物語はかなり毒々しい。
子供達を育て、家を守った母が蔑ろにされながら、最終的にはそれを認めるようなポジティブさがあるのが救いである。
原節子は役柄とは裏腹に下品に成り下がらないあたりが流石と言う他ない。
財産が絡むとやはりこうどろどろしたものになるという、人間の嫌なところを切り取る。
それに前後しながら、兄弟たちの醜悪な部分が顔を出し、これが罰当たりなんだが、笑えて、特に前半は面白くて仕方がない。
しかし、後半の投げやりな実子たちの姿は東京物語にも見られたもので、何も言わぬ母の姿とのコントラストとその残酷さに閉口する。
血が繋がることで相手を無意識的はおろか、理解するなど最も難しいことなのである。