Omizu

大阪の宿のOmizuのレビュー・感想・評価

大阪の宿(1954年製作の映画)
3.8
【1954年キネマ旬報日本映画ベストテン 第10位】
『煙突の見える場所』の五所平之助監督作品。水上滝太郎の同名小説を原作とする。東京から大阪へ左遷された男が逗留する酔月荘を中心に繰り広げられる人情ドラマ。

佐野周二演じる会社員、同僚の男、芸姑、酔月荘の女中たちの群像劇かな。

佐野周二演じる男はある事情から左遷された。彼は人一倍正義感が強く、人間味の薄れた社会を嘆いている。彼の同窓である同僚も同様のようだ。

資本主義の波に呑み込まれ人情が薄れ何でも金になってしまった世の中でそれぞれがもがく。

乙羽信子演じる芸姑は佐野周二に惚れているようだが、決して口には出さず報われることもない。彼女の気の強さが乙羽信子に合っていてとてもよかった。

流麗で美しい演出が見事で、登場人物をおざなりにせず丁寧に描いている。市井の人々の哀しみと些細な喜びがよく伝わってくる。

大団円となるラストの宴会は少しとってつけたような印象を受けたが、概ねよくできた作品であるように思う。乙羽信子と左幸子が特によかった。
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