藻尾井逞育

2046の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

2046(2004年製作の映画)
4.0
「恋愛にはタイミングが大切だ。出会いが早すぎても、遅すぎてもダメだ。別な時、別な場所で出会えば、結果は違ったかも。」

1960年代後半の香港が舞台。ホテルに滞在する作家の男は、かつてある女性を愛したが結ばれることもなく、今は刹那的な恋愛を重ねています。そして彼は自身の周りで起こる悲恋を、空想の近未来世界「2046」という物語に綴っていきます。

「2046へ向かう人の目的は、なくした記憶を探すこと。なぜなら2046では何も変わらないから。それが本当か誰も知らない。戻ってきた者は1人もいないから。」

この時間が止まった世界でのアンドロイドとの恋愛と、現実世界での刹那的な恋愛がクロスオーバーしていきます。
そんなある日、ホテル支配人の娘が日本人男性と恋に落ちたが父に反対されているのを知り、永遠の愛を求めて列車に乗り込む「2046」の一つ先、「2047」を書き始めます。彼は物語をハッピーエンドにしたかったが、その方法がわからず苦しみます。でも求め続ければチャンスは永遠にあると、娘の幸せを一番に考え結婚を許した父という現実世界から教わったようですね。
1997年に香港が返還され、一国二制度という高度自治が認められた(はずの)期限が2046年。この先、香港という社会がどうなるか分からないが、2047年より先もずっとハッピーであってほしいという祈りにも近いウォン カーウァイ監督の思いが伝わってきました。