映画大好きそーやさん

泥の河の映画大好きそーやさんのネタバレレビュー・内容・結末

泥の河(1981年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

仄かでも確実にある「死」と隣り合わせの世界を生きる、1人の少年の成長譚!
戦後、下町情緒溢れる大阪の町に、9歳の信雄は家族3人で暮らしており、そんな信雄を通して描かれる、明確な「死」というテーマ性に驚かされる作品でした。
序盤から馬車屋のおっちゃんが呆気なく死ぬところから始まって、信雄のお父さんや、信雄が友情を育む喜一たちのお父さん、そして、信雄の両親が経営するうどん屋に来る常連たちによって、断片的ではありますが、戦争の影が匂わされていきます。
戦争の悲惨さであったり、何も残らない不毛さであったりが、当時その戦火に晒された人々によってありありと映し出され、心の奥にどこか喪失感のようなものを抱えた彼らの表情に、グッとくる自分がいました。
そんな骨太な筋をもちながら、展開を支えるのは前述した喜一、並びにその姉銀子との友情ドラマであり、そこが何とも間口の広さと、示唆に富んだ作品としての深みを魅せてくれます。
ラムネ瓶を泥の河に投げるシークエンス、お小遣いを祭りの雑踏に全部落としてしまうシークエンス、蟹を燃やすシークエンス等々、解釈の幅は多分にあって、答えを自分なりに作っていくこと自体に面白さを感じるタイプの作品であるようにも思えました。
関わってはいけない、でも関わりたい。言い得ない軋轢を感じつつ隣に居続けた結果、やはり直面する壁。ラストカットに至るまで、徹底して信雄の心情を映していたのが印象的で、子役の絶妙な演技も相まって鑑賞後感は何とも言えない感情が湧いてきました。
あまり内容に触れることができておらず、すみません。色々と解釈を整理してから書こうと思ったのですが、あれこれと考えている内に実生活が忙しくなり、とりあえず今の所感だけでもと残しておくことにしました。
また、追記することもあるやもしれませんが、その際には書き出しのところにその由を書いておこうと思います。
よろしくお願いします。