とり

蒲田行進曲のとりのレビュー・感想・評価

蒲田行進曲(1982年製作の映画)
5.0
YouTube公式で期間限定無料公開中だったので久しぶりに観ました。
この頃の角川が関わってる映画はほんと外れがないというか、傑作の量産体制が凄まじい。どれだけヒトモノカネをぶっ込んでるんだっていう景気の良さ。
才能あふれる若いクリエイターや俳優たちが思う存分その力を発揮できる環境だったんでしょうね。

本作はその頂点とも言える完成度。
脚本、映像、セリフ。映画に携わる人々の情熱がほとばしっていて半世紀近く経った今でも驚くほどのエネルギーに満ち溢れています。
どこもかしこもお芝居風の作りが徹底されていて一体何重構造になってるんだってくらい観ていてクラクラします。
これが臨場感というんでしょうか。目の前で生の舞台を見てる感覚。スクリーンの中の人々が生きているリアルさ。長セリフや長回しの異様な空気感。

画面作りも凝っていて、カメラの中にカメラ。スタッフ役の向こうに役者役の俳優など、面白く奥行きのある仕掛け。縦方向にも空間を使ってるので抜け感があってずっと見ていたい心地良さがあります。

多くのハイテンションなシーンと少しのしっとりシーン。観ていて物凄く疲れる作風なので息抜きできる場面は貴重、なんですが中村雅俊の名曲が流れ出すので途切れがないというか、全く観客を掴んで離してくれないんですよね。没入感半端ないです。

今じゃ大御所と言われる人たちの若い勢いと競演が奇跡的な化学反応を起こしていると思います。
熱いっていいですね。何でもできそうな万能感、自分も若い頃持ってたなってふと思い出しました。
そして倫理的な面において現代の目で見てしまう自分にちょっとした悲哀も。時代を経て随分″お上品″で″気取った″人間にまとまったな、と。

ところで一瞬だけ出ているJACの真田広之。友情出演の域をはるかに超えててやばいです。
彼が登場した瞬間、場の空気を支配してまったく目が離せなくなります。
華があり繊細なのにダイナミックな殺陣。この人(志穂美さんも)もまたスタントマン出身であるというメッセージ性が最高じゃないですか。
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