CHEBUNBUN

180°SOUTH/ワンエイティ・サウスのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

2.5
【彼らは楽園を目指した。文明は楽園を壊した。】
コロナ禍で海外旅行に行けない私は、ロードムービーに飢えている。とはいっても『イントゥ・ザ・ワイルド』や『オン・ザ・ロード』、『星の旅人たち』に『モーターサイクル・ダイアリーズ』と主要どころは結構観てしまっているので、中々見つけるのが難しい。そんな中、『180° SOUTH ワンエイティ・サウス』を見つけた。アウトドアブランド「パタゴニア」と「ザ・ノース・フェイス」の創始者がかつて行った南米パタゴニアの旅を再現するという内容らしい。予告編にピンと来たので観てみました。

「パタゴニア」と「ザ・ノース・フェイス」の創業者イボン・シュイナードとダグ・トンプキンスは約半世紀前にパタゴニアを目指した。人誰一人いない雄大な自然に出ることで、文明というシステムから解き放たれる。旅には困難はつきものだが、宗教というしがらみから逃れるようにアメリカ大陸に渡り、土地を開拓していった先人の血がパタゴニアの旅を魅力的にさせる。そんな伝説的な旅に青年は半年かけて挑戦する。小舟に乗ってひたすら南を目指す。マストが折れるアクシデントに見舞われるが、淡々と問題を処理していく。まだ見ぬ新天地を見るために。ヨセミテの断崖絶壁にも果敢に挑戦する。刹那の隙間に金具を取り付け、慎重に崖を登っていく。そして足元がすくむような高さにハンモックを設置し、寛ぐ。過酷な旅の末にしか味わうことのできない景色は極上の味である。

しかしながら、2000年代の旅には文明が追いかけてくる。雄大な自然にパルプ工場ができており自然の美しさが損なわれてしまうのだ。かつてイースター島の人々は巨大なモアイ像を次々と創り出し、丸太を使って海岸まで数キロ、数十キロ輸送していた。しかし、モアイを運ぶ丸太作りのために森林伐採が進み、やがて資源不足となる。文明が栄えた全盛期の人口は約3万人。資源不足に陥った島は、互いに殺し合いカニバリズムに陥って滅んだ。その話と重ね合わせて、環境問題に対して問題提起をしていく。

イボン・シュイナードとダグ・トンプキンスの旅に憧れた者が旅を通じて環境問題を強く考えるようになる、ドキュメンタリーを撮りながら主軸が移り変わっていくタイプの映画なのだが、どうも大学生が学校を作りにカンボジア行ったら現実を知ってショックを受けました程度の浅いもので、「パタゴニア」と「ザ・ノース・フェイス」の創業者の哲学が知れるドキュメンタリーとしても、旅ドキュメンタリーとしても環境問題ドキュメンタリーとしても中途半端であった。

半年間の旅で、都市にも訪れているが、これがただ立ち寄っただけの観光を映したものにしか見えなかったのも残念。ただ、海外旅行に対するロマンは刺激されました。

私はサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼がしたくてたまらない。
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