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素顔の私を見つめて…のSPNminacoのレビュー・感想・評価

素顔の私を見つめて…(2004年製作の映画)
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自分を表に出さない、出せないのをパックした顔で暗喩したオープニングが巧い。レズビアンであることを隠したウィルと、まさかの妊娠が発覚して子供の父親を隠すママ。どちらも身内ではタブー視されるからだ。
でも、カミングアウトに葛藤する母娘ドラマが中心じゃない。そういうウェットなメロドラマを軽やかに外してる(ママが大好きなTVメロドラマへの視点が既にそう)。あくまでWヒロインのロマンティックコメディとして、テンポよく甘酸っぱい。しかも「愛のない結婚式」「恋人が旅立ってしまう空港」の2大クリシェを用いて、そこもまた軽やかに外していく。『卒業』引用からの捻り方!
母国のしきたりを変えない祖父母、コミュニティの外に出ないママ、アメリカ人として暮らすウィルの世代間ギャップを描きつつ、実はママには現代的な自我があって、娘には保守的な面があったりもする。抑圧してたのは自分自身でもあり、内面化した世間体を脱ぎ捨て素の自分を受け入れるまでの物語なのだった。
母ジョアン・チェンが若々しくて可愛らしく、デートの服選びや並んでテイクアウト食べながらTV観たりがルームメイトに見えるほど。運命のお相手も、なるほど彼女なら…と説得力充分だ。ミシェル・クルージとリン・チェンのカップルも甘く切ない。爽やかにロマンティックに円環するラストがお見事だった。
さすが傑作『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』のアリス・ウー監督。どちらもファッションに無頓着な主人公と大柄ぼんやり男子キャラが通じるね。
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