デニロ

少年時代のデニロのレビュー・感想・評価

少年時代(1990年製作の映画)
2.5
1990年製作公開。原作柏原兵三、藤子不二雄A。脚色山田太一。監督篠田正浩。柏原兵三の自伝的小説「長い道」を藤子不二雄Aが漫画化したものを、藤子不二雄Aが企画、製作して映画化。

配給の東宝マークが出る前に富山県の各種団体の名称がずら~っと流れていたけれど、この団体の人たちこの作品を観たのかしら。序盤から終盤まで富山の国民学校でのこどもたちのいじめ、ハブリ、権力闘争を描いている。殴る蹴る引っ叩く。血で血を洗う抗争。何のつもりで製作して、彼の諸団体は名前を出したのだろうか。

東京から疎開してきた少年が田舎の暗黒を如何にしてやり過ごすのか。肌に合わないグループから如何にしてハブられずに生き抜くのか。今に通じる話ではありますが、社会全体の同調圧力は強いものだという恐怖から人は逃れられないという集団の諦観。狂気に走るのは軍隊だけじゃありません。

ラスト。戦争が終わり疎開先の富山から東京に帰っていく主人公の少年を地元の少年少女たちが見送る。その時、子どもたちが軍歌を歌うので、慌てて駅長/大滝秀治がやめろ止めろ!軍歌以外の歌にしろ、と止めに入るんだけど、少年の伯父さん/河原崎長一郎が、この子たちは軍歌しか知らないんだから仕方ないだろう、さあ、軍歌でもなんでも歌え!!なんて身も蓋もないことを偉そうに言っている。子どもに軍歌や少国民の歌を歌わせていたのはあんたたちだろうと、底の抜けた大人たちの姿を写し出す。製作者の意図は違うんだろうけれど。そして、「予科練の歌」が悲しく流れます。

さて、1983年頃から2003年ま、でわたしは月に一度ないし二度富山、魚津、滑川周辺を、昼間は仕事でウロウロし、夜は小料理屋でキトキトの海産物を楽しんでいたのですが、富山県の取引先から決して筋違いなことを言われたこともありませんし、食堂や酒場でも粗雑に扱われたことはございません。両隣の新潟や石川の保守性とは異なって発想力を武器にする革新性も持ち合わせておりますよ。

神保町シアター 映画で辿る――山田太一と木下惠介 ――テレビドラマ草創期を支えた師弟二人 にて
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