どんとこい侍

ルートヴィヒ 完全復元版のどんとこい侍のネタバレレビュー・内容・結末

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

2024年2月、U-NEXTで視聴。

先日ミュージカルの「エリザベート」(シシィが主役)円盤を視聴、一昨年「スワンキング」という舞台(ルートヴィヒが主役だがずっとシシィの幻覚を見ている)を鑑賞したことを思い出して懐かしくなり、同じ題材を描いた映画を発見。
クリスマスの文化・写真・メガネ・傘・タバコ・時計・捜索犬を見ると、中世貴族の社会とは違って現代的でもある。だけど煌びやかで芸術的。不思議な時代。

実際のバイエルン国王ルートヴィヒも美しいけど、演じた俳優さんも美しいな!青い目!栗毛の髪!年齢が進むにつれて髭を生やしたり痩けていた頬が少しふっくらとしたり顔色が青白がったり虫歯が増えたりもリアル。
そして従兄弟のシシィも美しい!だけど2人は身分が誰よりも高い為、生まれた時からやるべきことは全て国のためと決まっている。そこに人生を捧げ向き合えるかどうかの違い(国民にとっては大きな差)だけど、決して埋められない寂しさを生涯抱えてるんだよね…

でっかいわんこと遊ぶワーグナーおじさん可愛い笑笑
サプライズのクリスマス生演奏は素敵だな。その一方で一国を破綻させる勢いで無心して浪費できる感覚すごい。ワーグナーもカインツも軽率に漬け込めるくらい「王は盲目的に自分のことが好きだから絶対裏切らない」って思ってる。ルートヴィヒが熱心に芸術家のパトロンしてるのが分かる。その愛を汲んで、この映画も全編に渡りワーグナー曲を使っている事にこだわりを感じる。

序盤のルートヴィヒの「私をひとりにしないで」って言葉が切ない。純粋無垢で大好きなものに囲まれていたかったんだろな…出来ることなら(浪費家)ワーグナーの音楽の世界で(人妻)シシィと…(都合の悪いことには目を瞑れるスタイル)
それに対して冷静にあしらうシシィの「愛は義務なの」って言葉が辛い。国のために輿入れして子を産んで、身の振り方ひとつで国民に避難されたり時には周囲との戦争にも巻き込まれたりする立場を経験をしてる人の言葉だ。
ゾフィーが嘆いて相談してるのにシシィによるブチ切れビンタは可哀想だった😂国を背負ってる私があんなお子ちゃまなルートヴィヒと戯れるわけないでしょ💢いつまでも慕ってきてダルいから私より話しが合いそうなお前をあてがってるのよ💢愚痴ってないでさっさと話進めて結婚せえ💢という怒りかな。結局何度も延期され結婚は破談。ゾフィーに幸あれ( ; ; )
そして現実を見ず戦争嫌いな兄ルートヴィヒに代わり、戦争に出ていた弟オットーが発狂してしまうの可哀想。この兄弟は根本的に親の愛に飢えてたり国王としての教育が欠けていたのかもしれないと感じた。

屋外のシーンがすっごく寒そうだけど、雪景色と黒いドレスマント・雪原を勢いよく走る白い馬・室内の赤い壁とブルーの衣装など、コントラストが綺麗!
調度品の装飾が金色できらびやかなのはもちろん、ルートヴィヒが幼少期から憧れた物語の世界を再現したであろう「白鳥のいる洞窟(城の中)」と「オシャレな方舟」もすごい、舞台装置のように上下する食卓(残したものは家来が食べ放題)もすごい、ルートヴィヒが思い描く夢のような空間がこの映画によって視覚で理解できる。
でも理想の城を何個建ててもほとんど住まないし、あまり慰めにはならなかったのかも…と思うと悲しくもある。あちこち見渡すシシィ込みで美術館のようだった。内心「とんでもねえ無駄づかいしとんな!?!?」って思ってるかもしれないが、ルートヴィヒの芸術心に感心したかもしれない。この時追い返さずに会っていれば何かが変わってたのかな…

ルートヴィヒが国民に人気だったのが不思議だけど、やっぱり美しいものに人々は弱いし?若く気さくだった姿も見ているし?滅多に人前に出なくなってもその姿が焼き付いていたのかな。
バイエルンには政治を行える組織(政府)があったから国費がやばくてもなんとか成り立ってたのもあるだろうけど、批判もそちらに向かってたのかしら…
この映画では「民衆の姿」が一切出てこない。ひたすらルートヴィヒの美しさと王の威厳、情熱と危うさ、純粋さと脆さ、その魂に全ての焦点が当てられてる感じ。歴史は自分で学ばせるスタイル。

デュルクハイム大佐が常にルートヴィヒに親身で泣ける。正直に助言する姿もだけど、年上のお偉いさんに囲まれて「政府の尺度から見たら国王の生活は狂気かもしれないがそれを望む人がいる(貴方達が失脚を仕組んでるのではないですか?)」なんて言うのも本当に勇気がいるよ( ; ; )
バイエルンって今はドイツだっけ。やたら酒が出てくるの納得🍺ノイシュバンシュタイン城で働く男性陣も酒飲んでダラダラしてるのに、いざと言う時は大臣たちを侵入者扱いして逮捕できたのすごい笑。城が広すぎてみんな走ってるのちょっと面白いな。
ピンチにデュルクハイム登場「軍隊は味方です。そしてミュンヘンへ。亡命以外道は無いのです」どこまでも健気に生きる道を用意してくれてる( ; ; )「毒が欲しい(死にたい)」なんて言われても「陛下の身の安全を」って思い続けてる( ; ; )
ルートヴィヒが最後に手放すのがシシィの絵画付き懐中時計だったの、ぬあぁ🤦‍♀️ってなった。愛すことは慣れてるけど愛されることを知らないのかもしれない。デュルクハイムの誠意に答えてたらもう少し長生きできたかもしれないのに…傷のない遺体になること・ミステリアスな死というのもルートヴィヒにとっては「美」だったのかもしれないなぁ

★ノイシュバンシュタイン城公式HP
(今年の春に修復工事が全て終わるらしい!→見返したら秋に延長してました笑)
https://www.neuschwanstein.de/

★ルートヴィヒの写真・生涯と城の建築史・設計図が時系列に載っていて分かりやすかったブログ
http://kim39570741.web.fc2.com/002_Schloss_Neuschwanstein/06.html